フィンテックと資産管理業務に強み、当局規制が追い風に

現地コード 銘柄名
03968

招商銀行股フン有限公司

(チャイナ・マーチャンツ・バンク)

株価 情報種類

49.90HKD
(11/23現在)

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 中国のフィンテック市場では、これまで巨大インターネット企業が従来型金融機関より有利な立ち位置にあったが、政府当局がここに来て監督強化に乗り出したことで、ネット企業のアドバンテージがこの先、後退する見通しとなった。これにより、フィンテック分野で出遅れていた銀行業界が、今後はネット企業との差を詰める見込み。BOCIは中でも、フィンテックに強みを持つ招商銀行の優位を見込み、株価の先行きに対して強気見通しを継続している。

“フィンテック銀行”を目指す戦略を掲げる同行は、すでに数回にわたって関連投資を実行し、主力のアプリ2種のMAU(月間アクティブユーザー数)はここ数年急増している。MAUの急成長を支えるのは適切な“シナリオ”の構築で、うち「非金融」シナリオの使用率が「金融」シナリオと肩を並べる水準に達した(シナリオとは、顧客を取り込むための筋書きを意味するマーケティング用語)。非金融分野のサービスシナリオはライフスタイル分野をカバーしており、顧客の新規獲得やつなぎ止めに有効。BOCIはこれまでの開発段階を経て、今後はフィンテック事業が収穫期を迎えるとみている。

 一方、国内経済の回復を背景に、同行の資産の質はすでに改善傾向に転じており、20年9月末の不良債権比率、要注意債権比率、期限経過(延滞)債権比率は、そろって6月末比で低下した。また、不良債権に対する延滞債権の割合は110.6%と、年初比で10.2ポイント低下。マクロ経済の不透明感を考慮し、不良債権の分類基準をより厳格化したことを示唆した。不良債権引当カバー率も同業銘柄の中で最も高い水準にあり、BOCIはリスク対応力の強化につながるとみて前向きに評価している。

 中国当局は猶予期間の延長を経て、21年末に資産管理業務に関する新規定を施行する運び。BOCIはこれにより、新たな業界構造にいち早く対応した大手が“先行者利益”を得るとみる。資産運用・管理(ウェルスマネジメント)サービスにおいて定評のある同行は、富裕層向け業務で再び成長期を迎えたが、同時にフィンテックを活用し、一般顧客向けにも同サービスを拡大し始めた。BOCIは今後も、資産管理ビジネスのアドバンテージを生かしたマネタイズ(収益事業化)が進むと予想。同時に、新たな業界図の中で生まれたビジネスチャンスをつかむとみている。

 BOCIは同業銘柄より早期のファンダメンタルズの回復を見込み、21年にはROE(自己資本利益率)も上向くと予想。理由として国内経済の回復のほか、融資構造や顧客基盤の最適化を目指した同行の取り組みを挙げた。また、新型コロナに伴い顧客性向が変化する中、フィンテックや資産管理ビジネスが、さらなる強みにつながるとし、コロナ後の一段の高評価を後押しする可能性を指摘している。20年予想PBR(株価純資産倍率)1.98倍をあてはめて目標株価を引き上げ(21年予想PBRでは1.78倍)、株価の先行きに対して強気見通しを継続している。