自社株への投資が主要な投資

 バークシャーの7-9月期の決算は、売上高が630億2,400万ドル(前年同期比3%減)、純利益は前年同期比82%増の301億3,700ドルと、減収だったものの大幅増益となった。前の四半期(4-6月期)に続き、保有するアップルの値上がりが最終損益を押し上げた。保有する株式の評価損益が反映されるため、最終損益は変動が大きくなる。ちなみに、今年第2四半期の純利益は263億ドルだったが、第1四半期は500億ドル近い純損失だった。

バークシャー・ハサウェイ(日足)

出所:石原順

バークシャー・ハサウェイ(A株)とS&P500の年初からの推移(青:S&P500  赤:BRK-A)

出所:ヤフーファイナンス

 第3四半期は93億ドルに上る自社株買いも実施。9月までの9カ月間の自社株買いは総額160億ドルに達した。一方、9月末時点のキャッシュポジションは1,457億ドル、過去最高となった第2四半期末時点(1,466億ドル)に比べるとわずかに減少したものの、引き続き高水準である。

バークシャー・ハサウェイの手元現金とNYダウの推移(2020年9月末時点)

出所:石原順

 今回のForm13Fでも明らかになったように、新たにヘルスケア株への20億ドル近い投資や日本の商社への60億ドルの投資を行っているものの、バークシャー全体のポートフォリオから見ればそれらは微々たるものである。バークシャーは企業としてかなり巨大化しているため、ボトムラインに大きな影響を与えるためには買収も巨大でなければならない。バフェットは細かい売り買いを続けているが、彼がやりたいと思っている大きな案件、つまり象のような規模の案件は、今日の市場で手に入れるのは難しいのかもしれない。

 インベストピアの記事「What Buffett's Berkshire Buyback Says About the Market(バフェットのバークシャー・バイバックが市場について語ること)」によると、2020年にバークシャーの自社株買いが加速していることについて、株主の整理を始めているのではないかとの指摘があった。

 バフェットとマンガーは、最終的な後継者を指名する前に、あまり忠誠心のない株主が保有する株数を意図的に減らしているのではないかという見立てである。バフェット90歳、永年のビジネスパートナーであるマンガーは96歳だ。バフェットもマンガーも最期までバークシャーを出て行くことはないかもしれないが、その日は必ずいつかやってくる。バフェットは継承に先立ってバークシャーに忠誠心のない投資家に保有株を精算する機会を与えているのではないかと言われている。

 これはあくまで推測に過ぎない。しかし、9月までのバークシャーの最大の投資は自社株への投資だった。ところが、バークシャーは公表されている以外に新たな投資を行っており、それが近々明らかになるかもしれない。続いてそれを確認してみよう。