投資の節税対策ウソホント(3)確定申告の思わぬ落とし穴とは?
手続きする負担を除けば、税制面ではメリットしかないように思えます。しかし社会保障の面から見ると実はデメリットの方が大きい場合があります。
投資の節税対策のウソ1:確定申告をすれば必ず節税できて、メリットのほうが大きい
社会保障の観点では、売却した投資金額は収入と見なされるケースがあります。それによって各種控除から外れたり、保険料の支払額が増えたり、医療費などの自己負担額が増える可能性があります。
これは特にシニア世代の人にとっては大きな支払い負担増につながりかねません。特に注意が必要な例を以下でご紹介しますので、注意しておきましょう(2020年11月24日現在)。税金還付が期待できるとしても、あえて確定申告をしない方がメリットのある場合もあります。
投資の節税対策のウソ2:確定申告をしても、配偶者控除には関係ない
配偶者の年収が103万円以上になると、配偶者控除から外れます。売買損失の繰り越し控除後に株取引などで利益が出た場合、そのまま合計所得に査定されます。
そうなると扶養者の合計所得が増え、配偶者控除や健康保険の扶養から外れたりする場合もあります。
投資の節税対策のウソ3:国民健康保険料に影響は出ない
保険料率は自治体によって異なりますが、加入者の所得金額に料率を乗じて保険料を算出しています。そのため、複数の金融機関の取引や繰り越した譲渡損失を損益通算するために確定申告をすることで、所得が増えれば、支払う保険料が増える場合もあります。
投資の節税対策のウソ4:介護保険料に影響は出ない
65歳以上の人の介護保険料は市区町村ごとに9段階(一部例外地域あり)の所得層別に決められていて、こちらも売買損失の繰り越し控除前の金額で算定されます。そのため、医療費の窓口負担と同様に、翌年に大きく収益が出たときに大きく保険料が変わるので注意が必要です。
投資の節税対策のウソ5:介護保険の自己負担割合は変わらない
サービスを受ける本人の合計所得金額や年金収入によって負担割合が1~2割に変動する場合があります。要介護認定の場合、1割負担が2割負担になると、月1万円以上も自己負担分が増える場合もあります。さらに2018年8月から年収340万円以上の介護保険の負担が3割になっているので、注意が必要です。
投資の節税対策のウソ6:医療費の窓口負担に影響はない
医療費の自己負担割合は、70~74歳で2割、75歳以上は1割が原則です。ただし、単身なら年収383万円、夫婦なら520万円を超えると、「現役世代の人と同程度」の所得があると見なされ、3割負担になります。控除額と医療費負担増を天秤にかけて判断したほうがいいでしょう。
投資の節税対策のウソ7:利益があれば税金を支払う必要がある
そして、利益があれば税金を支払う必要があると考えがちですが、年間取引の利益が20万円以内の場合はそうとも限りません。
国税庁のウェブサイトを見ると、「給与所得の収入金額の合計額から、所得控除の合計額を差し引いた残りの金額が150万円以下で、さらに各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円以下の方は、申告は不要」と記載されています(詳細は国税庁ウェブサイト「確定申告が必要な方」へ)。
この各種の所得金額の合計額20万円の範囲には、原則、源泉徴収されている配当金は含まれません。つまり、人によっては売買による利益が年間20万円以内であれば税金がかからないと考えられます。ただし、この場合は特定口座(源泉徴収あり)を選ぶと売買の都度、源泉徴収されてしまうことに注意が必要です。そのため、取引金額が大きくないうちは、あえて特定口座(源泉徴収なし)を選ぶという選択肢もあります。