インテル
1.2020年12月期3Qは、4.5%減収、21.5%営業減益
インテル(ティッカーシンボルはINTC。NASDAQ上場)の2020年12月期3Qは、売上高183億3,300万ドル(前年比4.5%減)、営業利益50億5,900万ドル(同21.5%減)となりました。
最も成長性が高い分野であるデータセンターグループは、売上高59億500万ドル(同7.5%減)、営業利益19億300万ドル(同38.9%減)となりました。データセンター・サーバー用CPU等はテレワークの増加で伸びましたが、企業向け、政府向けサーバー用CPUは新型コロナ禍による不況の影響を受け大幅減収となったもようです。そのため、高率の利益成長(データセンターグループの今1Q営業増益率は89.7%増、今2Q72.2%増)には急ブレーキがかかりました。
業績寄与が最も大きいクライアント・コンピューティング・グループ(業務用、家庭用パソコン向けCPUなど)は、売上高98億4,700万ドル(同1.4%増)、営業利益35億5,400万ドル(同17.4%減)とこれも営業減益となりました。ノートPC向け第11世代新型CPUが好評でしたが、全体では微増収営業減益でした。
サーバー向け、パソコン向け両方に重要な10ナノライン(インテルの10ナノラインは一部が7ナノ相当になっている)はフル生産になっており、生産能力も増強されましたが、特にパソコン用CPUについては需要に対して充足できなかったと思われます。一方で設備増強に伴い減価償却費が増加しており、これがデータセンターグループ、クライアント・コンピューティング・グループ両方にとって減益要因となったと思われます。
また、AMDとの競争により、特にパソコン市場においてインテルの市場が侵食されることになったもようです。
表6 インテルの業績
表7 インテル:セグメント別業績(四半期ベース)
表8 インテル:セグメント別業績(通期)
2.業績悪化にいつ歯止めがかかるのか
インテルの今4Qガイダンスから計算すると、2020年12月期通期予想は、売上高753億ドル(前年比4.6%増)、営業利益222億ドル(同0.7%増)となります。楽天証券予想も同じです。
会社側が説明するように、今回の業績悪化が主として新型コロナ禍による景気の悪化によるものであれば、新型コロナワクチンが完成してまともに効くことが分かれば順次景気は回復に向かうと思われるため、サーバー、パソコン用CPUは来期中には回復に向かうと思われます。また、景気が回復しなくとも、現在アメリカの知的労働者の間で広がっている仕事のほぼ完全なオンライン化が全世界に拡大すれば、これもCPU需要、特に高性能CPUの需要が来期には回復すると思われます。
ただし、今回のインテルの業績悪化には、景気悪化要因だけではなく、AMDとの競争、生産能力不足の問題が重要な要素としてあると思われます。この点がどのように改善されるかが来期業績のポイントになると思われます。楽天証券では、来期を売上高795億ドル(前年比5.6%増)、営業利益241億ドル(同8.6%増)と予想しますが、これは景気、競争、生産能力の問題がある程度は解決に向けて進捗するという期待に基づくものです。
なお、10月20日付けでインテルと韓国のメモリメーカー、SKハイニックスは、SKハイニックスがインテルのNAND型フラッシュメモリ事業(不揮発性メモリグループに含まれる)を総額約90億ドルで買収すると発表しました。不揮発性メモリグループの全てを売却するわけではありませんが、これでインテルはCPUに集中することになりそうです。政府の認可取得が2021年後半になりそうなので、この買収の業績へのインパクトは楽天証券の2021年12月期予想に織り込まれていません。
3.目標株価を、55ドルとする
今後6~12カ月間のインテルの目標株価を55ドルとします。楽天証券の来期予想EPS 4.89ドルに想定PER10~15倍を当てはめました。楽天証券予想では来期PERは9倍台となり、割安感があり、一定の投資妙味はあると思われますが、前述のようなリスクもあります。