エヌビディア
1.2021年1月期3Qは、56.8%増収、50.8%営業増益
エヌビディア(ティッカーシンボルはNVDA。NASDAQ上場)は元々はパソコンゲーム用のGPU(グラフィックプロセッサー)の会社でしたが、高性能GPUがAI(人工知能)の駆動に適していることが分かってから急成長が始まりました。最近ではゲーム用GPUだけでなく、データセンター用GPUが急成長しています。エヌビディアもAMD同様ファブレスで生産は主にTSMCに委託しています。
エヌビディアの2021年1月期3Q(2020年8-10月期)は、売上高47億2,600万ドル(前年比56.8%増)、営業利益13億9,800万円(同50.8%増)となりました。
市場別売上高を見ると、ゲーミングが22億7,100万ドル(同36.9%増)、データセンターが19億ドル(同2.6倍)となりました。全社売上高の前年比も高率でしたが、営業利益率は前3Q30.8%から今3Q29.6%と、大幅増収にもかかわらずやや低下しました。研究開発費の増加と販管費の増加が響きました。
表4 エヌビディアの業績
表5 エヌビディアの市場別売上高(年度)
グラフ1 エヌビディアの市場別売上高:四半期ベース
2.今期は大幅増益が予想されるが、来期はやや鈍化する可能性も
今3Q決算発表時に会社側が提示したガイダンスより計算すると、今4Q会社予想は、売上高48億ドル(前年比54.6%増)、営業利益13億7,000万ドル(同38.4%増)となる見通しです。楽天証券も同じ予想です。トレンドは今3Qまでと同じでデータセンター向けの好調が全体をけん引する構図と思われます。
これにより、今期2021年1月期会社予想は、売上高165億ドル(前年比51.1%増)、営業利益44億ドル(同54.6%増)となる見込みです。楽天証券予想も同じです。
来期2022年1月期も業績好調が予想されますが、不透明要因もあります。ゲーミング市場では、PS5と新型Xboxが普及期に入ることで、GPUを搭載したゲーミングPCの売れ行きが鈍化する可能性があります。また、2021年中に任天堂がニンテンドースイッチの上位機種を発売する可能性があり、これはニンテンドースイッチにCPU、GPUを供給しているエヌビディアにとってプラス要因ですが、ここでも新型ゲーム機との競争が気になります。
また、データセンター向けが今後も倍増ペースが続くのか、今年5月に発表された最新型GPU「A100」の寄与が期待されますが、実際には来期に入ってみなければわかりません。
このような見方から、楽天証券では2022年1月期を売上高220億ドル(同33.3%増)、営業利益62億ドル(同40.9%増)と予想します。
なお、エヌビディアは9月13日付けでソフトバンクグループ傘下のアームを総額400億ドルで買収すると発表しました。アームの売上高は2019年実績で約1,800億円、EBITDAは300億円です。アームはスマートフォン向けをはじめとするCPUのアーキテクチャーを提供しているため、アームの買収に成功すれば、エヌビディアはGPUだけでなくCPU事業に進出することになります。これは大きなプラスポイントです。ただし、アームの事業規模に対して買収金額が大きいため、買収後のエヌビディアの業績に負担になる可能性もあります。買収完了予定は2022年3月までで、それまで各国の規制当局の審査を受けることになります。このため、楽天証券の2022年1月期業績予想にはアームの寄与は考慮していません。
3.目標株価を600ドルとする
今後6~12カ月間の目標株価を、600ドルとしました。2022年1月期楽天証券予想EPS 9.13ドルに成長性を考慮した想定PER、60~70倍を当てはめました。ゲーミング向けの成長性に不透明感があるため、当面は大きな投資成果を期待しにくい可能性があります。