親子上場の解消が、近年、急速に進んでいる
近年、親子上場企業(親会社と子会社が両方とも株式市場に上場している企業)が、親子上場を解消する動きが広がっています。以下2つのいずれかの方法によって、親会社と子会社の両方が上場している状態を解消する動きです。
【1】完全子会社化
親会社が子会社に対してTOBを実施して子会社株をすべて取得し、完全子会社(親会社が100%所有する子会社)にする。
【2】親子関係の解消
親会社が子会社株をすべて売却(または第三者に事業譲渡)して親子関係を解消する。
最近の例では、NTT(9432)がNTTドコモ(9437)に対してTOBを実施し、完全子会社化を目指していることが話題になっています。TOBは無事成立しました。
NTTは今後、TOBに応募しなかったNTTドコモの少数株主の保有株もすべて買い取る手続きを進めます。NTTドコモは、今後、NTTの完全子会社となり、上場廃止となる見込みです。
今年5月には、ソニー(6758)が金融子会社であったソニーフィナンシャルHD(当時ソニーが発行済株式の60%を所有する上場子会社)に対してTOBを実施しました。TOBは成立し、ソニーフィナンシャルは完全子会社となり、上場廃止となりました。
逆に、子会社を売却する動きも広がっています。今年3月、昭和電工(4004)が日立製作所(6501)の上場子会社であった日立化成に対してTOBを実施。日立化成は上場廃止となり、昭和電工の完全子会社となりました。日立製作所が、日立化成について、本業との関連が小さいと判断して親子関係を解消し、昭和電工に売却することを決めたためです。
日立製作所(6501)は、過去に多数の上場子会社、あるいは、上場関連会社を保有していましたが、近年、急速に親子上場の解消を進めました。本業の一部と考える子会社にはTOBをかけて完全子会社にしました。
2009年には、当時上場子会社であった、日立情報システムズ・日立ソフトウェアエンジニアリング・日立システムアンドサービス・日立プラントテクノロジー・日立マクセルの5社に対してTOBを実施し、完全子会社としました。
一方、日立化成・日東電工(6988)のように本業との関連が薄いと考える子会社・関連会社は売却を進めました。総花経営とも言われる総合電機の多角化路線と決別し、競争力の高い事業に特化する「選択と集中」を進めるためです。
野村HD(8604)も、上場子会社の保有株の売却を、少しずつ進めてきました。野村総合研究所(4307)、野村不動産HD(3231)などの上場子会社がありますが、長い年月をかけて少しずつ売却を進めてきました。
野村総合研究所は、もともと野村證券のシステム開発や調査を担当していた完全子会社でした。最初は、野村證券にビジネスのほとんどを依存していました。
野村證券は、野村総合研究所が野村グループ以外の顧客を幅広く取って成長できるようにするために、野村総合研究所を上場させ、野村色を少しずつ低下させていきました。その戦略が奏功し、野村総合研究所は、金融業界や流通業界から幅広くビジネスを取るIT業界の成長企業となりました。
野村不動産HDについても同じです。2017年に一時日本郵政(6178)への売却交渉を進めていたと報道が出ました。ところが、この交渉はその後中止となり、売却は実現しませんでしたが、将来的に、野村不動産HDを売却していく方向は変わっていないと推定されます。