トランプ氏は逆転勝利できる!?そのために必要な3つの条件とは!?

 勝利をつかみ損ねたトランプ氏は、日本時間11月9日(月)午前時点で、まだ敗北宣言をしていません。今回の選挙には不正が複数あり、その根拠があると主張しています。トランプ氏は、選挙戦の最中、郵便による投票は不正が起こる、と主張していましたが、実際にそのようなことが起こった、と言っているわけです。

 各種報道によれば、トランプ陣営は、ペンシルベニア州で、開票の際、正しい監視が行われなかった、ネバダ州で、登録されていない人物から郵便投票があった、など複数の訴訟を起こしていますが(ミシガン、ウィスコンシンでの訴えは退けられた模様)、9日(月)より、法廷闘争にさらに力を入れるとしています。

 法廷闘争が激化した場合、投票日の1週間前(10月27日)、保守系の判事エイミー・バレット氏が承認されたことが意味を強めます(現在、米国の最高裁判事9人のうち6人が保守系)。判決が、同氏を指名したトランプ氏寄りになる可能性があります。

 トランプ氏が法廷闘争を激化させ、例えば、バイデン氏が勝利した複数の州で再投票や再集計が命じられた場合、選挙人の決定期限である12月8日(火)に、それらの州の選挙人が確定していない事態が発生し得ます。そして、一部の州で選挙人が不在のまま、12月14日(月)の選挙人による投票が行われる可能性があります。

 選挙人による投票の内容の確認・承認は、来年1月6日(水)に行われる予定ですが、法廷闘争が激化した場合、バイデン氏、トランプ氏ともに、勝利に必要な270票以上を獲得できない可能性はゼロではありません。

 選挙人による投票で、次期正副大統領が決まらない場合、米下院が大統領を、同上院が副大統領を選出することになります。大統領選挙と同じ日に、下院全議席と上院の3分の1の改選が行われましたが、改選後の下院と上院が、大統領、副大統領をそれぞれ、就任日である1月20日(水)までに選出します。

 下院が大統領を選出する際は、議席の数ではなく、“州ごとの1票”が投じられ、獲得票数が全州の過半数に達した候補者が大統領に、上院が副大統領を選出する際は、“議員ごとの1票”が投じられ、獲得票数が全議員の過半数に達した候補者が副大統領になる、とされています。

 下院における、議席の過半数を獲得した州の数は、現段階(11月9日日本時間午前)で、バイデン氏を擁立した民主党が19州、トランプ氏を擁立した共和党が26州です(同数が4州、未決が1州)。

 上院は、民主党・共和党、どちらが議席の過半数を獲得したか、まだ判明していません。決選投票となったジョージア州で、来年1月5日(火)に行われる投票でどちらの党が過半数を獲得するかが、判明します。

 上記より、“法廷闘争にさらに力を入れる”としているトランプ氏が、逆転勝利するために必要な、最低限の条件は、以下の3つと考えられます。ペンス氏の副大統領再選を含めれば4つです。

 法廷闘争により、何らかの方法で選挙人を奪う方法もあるかもしれませんが、現時点のトランプ氏の選挙人の獲得数が213人であることを考えれば、奪って自分のものにする(自分の選挙人の数を270にする)よりも、相手の選挙人を減らし、その後、議会で選ばれる方が、難易度は低いとみられます。

(1)不正を立証する。

(2)12月8日(火)までに、法廷闘争により(一部の州での再投票や再投票などを認めさせ)、バイデン氏が獲得した選挙人の数を269人以下にする。

(3)改選後の下院において、共和党が議席の過半数を獲得した州の数を、民主党よりも多くする(現状維持)。

※トランプ大統領の再選に加え、ペンス副大統領の再選を果たすには、以下の(4)も必要。

(4)1月5日(火)に予定されている、ジョージア州での上院の決選投票で共和党議員を勝利させる。

図:次期米大統領誕生までのスケジュールと筆者が考えるトランプ氏の理想形

出所:各種情報をもとに筆者作成

 特に(2)の難易度は非常に高いため、全体的には、逆転は難しいとみられます。しかし、最高裁の判事が保守系で共和党寄りであること、下院で州ごとの投票となった場合、共和党が有利であること、上院でまだ議席数が確定していないこと、などの条件がある以上、“あきらめない”と明言しているトランプ氏は、しばらくは戦う姿勢を崩さない可能性があります。

 トランプ氏は、不正を立証しなければ、負けを認めざるを得なくなります。このため、同氏が述べているとおり、目先、証拠探しをし、法廷闘争を本格化させるとみられます。

“バイデン氏勝利確実”の報を受け、リスクオン(リスクを取って運用をするムード。対義語はリスクオフ)に株式市場、景気動向に影響を受けやすいコモディティ(商品)市場は沸いていますが、トランプ氏の“あきらめない”姿勢が強まれば、不安が台頭する可能性があり、注意が必要です。