為替DI:個人投資家の半数が、「11月に円高がやって来る」

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示しています。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

「11月のドル/円は円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 楽天証券が10月末に実施した相場アンケート調査の結果によると、回答をいただいた個人投資家4,761人のうち、半数の約50%(2,396人)が、11月のドル/円は「ドル安/円高に動く」と予想しています。「円高」予想が5割を超えたのは7月以来。

 残りの5割は、「円安」と「動かない」がほぼ半分に分かれ、「円安に動く」は約26%(1,214人)、「動かない(わからない)」は約24%(1,151人)でした。

 なお、今回のアンケートは米大統領選挙の前に実施されたものですが、選挙結果を見通しての相場観だとして扱っています。

 新型コロナに対する米国の歴史的な政策対応は、「失業は一時的なものであり、経済が再開すれば元に戻る」という根拠に基づいて、失われた所得を補うことに焦点を当ててきました。

 しかし、全ての業種の雇用がコロナ前に戻ることはありません。なぜなら、この失業は不況が原因ではなく「雇用の構造変化」が生み出したものだからです。

 雇用の構造変化は、すでに数年前から起きていました。米アマゾンの無人コンビニ「Amazon Go」がオープンしたのは2018年1月。日本でも同様の試みが2020年1月頃にスタートしています。

 そこに、コロナウイルスの大流行が発生して、外出が制限され他人との接触を避けるように社会のスタイルが激変したことで、雇用の構造変化も一気に加速することになりました。コロナによる経済構造変化は不可避で、ある意味健全ともいえます。問題は変化のスピードで、3年かかるはずだった変化が半年のうちに起きているのです。経済システムは長い時間をかけた変化には対応できるが、数年の変化が数カ月に凝縮された結果、さまざまな問題が起きているのです。

 米国の労働市場は今年6月以来、マーケットが予想していたより170万人も多くの雇用を生み出しました。ただし雇用回復は一様ではなく、先行きのある企業が採用を拡大する一方で、衰退に向かっている企業は生き残りをかけて大規模な人員カットを断行するか規模を縮小、あるいは運命を受け入れ廃業の道をたどっています。

 ブッキング(予約、Booking)、 エンターテインメント(Entertainment), エアー(航空、Air), クルーズ(Cruise)、カジノ、ホテル(Hotel)など、いわゆるBEACHと呼ばれる業界では、特に新型コロナによる売上被害が深刻で、雇用の構造変化が進むなかで、これらの仕事は消えてしまうリスクにさらされています。世界観光協会の調べでは、観光業界全体ですでに1億4,000万人以上が職を失い、この状況が続くなら観光業に携わる人の二人に一人が失業するということです。また業種と関係なく、低、高スキル労働者の雇用が増える一方で、中スキル労働者、いわゆるゼネラリストと呼ばれるサラリーマンが不要とされる時代がきています。

 もっとも暗い話ばかりではなく、米国、ヨーロッパや英国では、ロックダウンで外出を制限された若者達による一大起業ブームが起きているそうです。ただ、雇用市場が構造変化に対応するにはまだしばらく時間がかかるわけで、それまでの間、政府は従来の失業対策によって支えるしかありません。皮肉なのは、政府の手厚い雇用対策がゾンビ企業を延命させることになり、そのゾンビ企業どもが新しい起業の成長を妨げていることです。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 10月末に楽天証券が実施した相場アンケート調査の結果によると、回答頂いた個人投資家4,761人のうち約41%(1,965人)が、11月のユーロ/円は「ユーロ安/円高に動く」と予想しています。

「ユーロ高/円安に動く」は、最も少ない約16%(759人)。「動かない(わからない)」は、約43%(2,037人)でした。

 

 10月のユーロ/円の終値は121.91円。9月終値に比べて1.68円のユーロ安/円高水準でした。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 10月末に楽天証券が実施した相場アンケート調査の結果によると、回答頂いた個人投資家4,761人のうち約31%(1,465人)が、11月の豪ドル/円は「豪ドル安/円高に動く」と予想しています。

「豪ドル高/円安に動く」は約16%(746人)で最も少なく、「動かない(わからない)」は約53%(2,550人)で半数を超えています。

 10月の豪ドル/円の終値は73.56円。9月の終値に比べて約2.26円の豪ドル安/円高水準でした。