はじめに
今回のアンケート調査は2020年10月26日(月)~10月28日(水)の期間で行われました。
10月末の日経平均株価終値は2万2,977円となり、節目の2万3,000円台割れで取引を終えました。前月の9月末終値(2万3,185円)からは208円安、月足ベースでも3カ月ぶりに下落に転じています。
あらためて、10月の国内株市場を振り返ると、月初は東証の障害による売買停止やトランプ米大統領のコロナウイルス感染などのサプライズがあり、月末は米大統領選挙直前のポジション整理や欧米地域での新型コロナウイルス感染再拡大などで急落するなど、荒っぽい値動きになりましたが、月の半ばについては、相場は崩れることはなく、むしろ早い段階で値を戻し、日経平均は2万3,500円台をおおむねキープする展開で、コロナ・ショック後の戻り高値を更新したほか、マザーズ指数も2018年1月以来の高値をつける場面も見られました。
このような中で行われた今回のアンケートは、4,700名を超える個人投資家からの回答を頂きましたが、日経平均・米ドルそれぞれの見通しDIは、「株安・円高」という結果となりました。10月の日本株は、米国株市場が不安定な中で、「スガノミクス」関連銘柄の物色や日本株への見直し機運などが相場を支えたものの、さらなる上値はトライしにくいという見方が優勢になったのかもしれません。
次回もぜひ、本アンケートにご協力をお願いいたします。
日経平均の見通し
楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之
「米政治イベントを前にDIが後退」
今回調査における日経平均の見通しDIは、1カ月先がマイナス13.17、3カ月先はプラス2.21となりました。前回調査の結果がそれぞれプラス6.11、プラス5.54でしたので、1カ月・3カ月ともにDIが悪化した格好です。1カ月先のDIがマイナスとなるのは7月調査以来です。
回答の内訳グラフで具体的な状況を見てみると、1カ月先の強気派が前回の25.52%から18.86%へと減少していますが、中立派が半分近くを占めているため、弱気に大きく傾いたというよりは、米大統領選挙を直前に控え、慎重な見方が優勢になったと捉えた方が良さそうです。実際に、3カ月先の内訳グラフは、強気・弱気・中立がバランスを保っている印象です。
また、ここ最近の日経平均は、「月末あたりに日経平均が大きく下落し、翌月の相場展開が警戒されるものの、いざ始まってみたら反発」という展開が7月・8月・9月と続いています。10月も月末の30日に354円安と急落しましたが、11月1日は318円高の反発となっており、最近のパターンを踏襲しています。
さらに、決算シーズンや「スガノミクス関連」を手掛かりとする個別物色の動きも相場を支え、株価指数が弱い中でも、ソニーやパナソニックなど業績予想が上振れした銘柄はしっかり買われるなど、「森よりも木を見る」相場地合いになっています。
一方の米国株については、大詰めを迎える米大統領選挙や欧米でのコロナウイルス感染再拡大を前にして、市場が慎重になりつつあるムードを反映していた面がありました。「報道ベースでみれば、バイデン候補が勝利するだろうが、11月3日の投開票後も一波乱あるかもしれない」、「春先のコロナ感染流行からの経済の持ち直し傾向は続くだろうが、感染再拡大によってシナリオ修正に迫られるかもしれない」といったように、「だろう」運転から「かもしれない」運転の色合いを濃くさせたことで調整となったと思われます。
そのため、本格的な政治混乱やウイルス感染が実体経済への深刻な影響を与えるなど、警戒感が現実的な不安に発展しない限りは、株価水準やテクニカル分析の節目で買いが入ってくるかと思われますが、もうしばらくは弱含みのもみ合いが続きそうです。
もっとも、このレポートが掲載される時点で米大統領選挙の結果は判明していない可能性がありますが、どちらの候補が勝利するにしても、大規模経済政策への期待から米株はいったん持ち直すと思われます。ただ、郵便投票をめぐって、トランプ陣営が反発しているなど、市場が選挙結果を織り込むタイミングが難しくなっています。
とはいえ、仮に民主党政権に代わったとしてもコロナ対策には苦慮すると思われるほか、そもそも、バイデン氏自体が、民主党では党内の反左派勢力として大統領候補として選ばれ、大統領選では反トランプで選挙戦を戦ってきた面があり、必ずしも、本人への期待が高いかといえば微妙なところがあります。「何かをやってくれそう」感を演出できなければ、株価の上昇期待が進まず、むしろバイデン氏は選挙戦よりも勝利後の方に課題があるのかもしれません。
今月の質問「米大統領選後はどうなる!?」
楽天証券経済研究所 根岸 美知代
このアンケートが行われたのは、米大統領選挙直前の10月26~28日でした。今回の選挙は、歴史的な大混戦となり、11月5日になっても、まだ勝者が決まっていません。
【今月の質問1】 米国株を買ったことはありますか?
最近、米国株投資を始める方が増えています。数年前までは、日本株しか買ったことがない方がほとんどでしたが、今回のアンケートでは38.76%もの方が米国株を買ったことがあると回答しており、様変わりです。1株から購入できる手軽さ、世界の成長企業に投資できるメリットから、投資を始める方が増えています。
【今月の質問2】 米国株は、11月3日に行われる米国大統領選挙後に、どうなると思いますか? もっともイメージに近いものを1つだけ選んでください。
「トランプ再選で上昇」が約40%、「バイデン当選で上昇」が約20%でした。合わせると「上昇」予想が60%でした。米国株の先行きを強くみている方が多いことがわかります。
一方、「トランプ再選で下落」は約6%、「バイデン当選で下落」は約21%でした。合わせると、「下落」予想が27%でした。
この回答から「トランプ氏が再選したほうが株式市場にとって好ましい」と考えている方が多いことがわかります。
【今月の質問3】 米国と中国の対立は、米国大統領選挙の結果が出た後に、どうなると思いますか? もっともイメージに近いものを1つだけ選んでください。
「バイデン当選で対立がやや緩和」が約34%、「トランプ再選で対立が激化」が約33%でした。「トランプ再選なら対立激化、バイデン当選ならやや緩和」と考えている方が多いことがわかりました。ただし、「トランプ再選で対立がやや緩和」の回答も約12%、「バイデン当選で対立が激化」の回答も約7%ありました。少数意見ですが、そうならないとも限りません。今後の成り行きをじっくり見守りたいと思います。
【今月の質問4】 今、買いたい米国株の銘柄名をひとつだけ教えてください。
ベスト10の発表です。
昨年、2019年の10月に同じ質問をしています。
その時と比較すると、1位が入れ替わり、ベスト10に入っていなかったハイテク、新型コロナウイルス関連銘柄も入ってきています。これからの投資判断のご参考になればと思います。
今回もたくさんのご意見をいただきまして、ありがとうございます。
為替DI:個人投資家の半数が、「11月に円高がやって来る」
楽天証券FXディーリング部 荒地 潤
楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示しています。
「11月のドル/円は円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」
楽天証券が10月末に実施した相場アンケート調査の結果によると、回答をいただいた個人投資家4,761人のうち、半数の約50%(2,396人)が、11月のドル/円は「ドル安/円高に動く」と予想しています。「円高」予想が5割を超えたのは7月以来。
残りの5割は、「円安」と「動かない」がほぼ半分に分かれ、「円安に動く」は約26%(1,214人)、「動かない(わからない)」は約24%(1,151人)でした。
なお、今回のアンケートは米大統領選挙の前に実施されたものですが、選挙結果を見通しての相場観だとして扱っています。
新型コロナに対する米国の歴史的な政策対応は、「失業は一時的なものであり、経済が再開すれば元に戻る」という根拠に基づいて、失われた所得を補うことに焦点を当ててきました。
しかし、全ての業種の雇用がコロナ前に戻ることはありません。なぜなら、この失業は不況が原因ではなく「雇用の構造変化」が生み出したものだからです。
雇用の構造変化は、すでに数年前から起きていました。米アマゾンの無人コンビニ「Amazon Go」がオープンしたのは2018年1月。日本でも同様の試みが2020年1月頃にスタートしています。
そこに、コロナウイルスの大流行が発生して、外出が制限され他人との接触を避けるように社会のスタイルが激変したことで、雇用の構造変化も一気に加速することになりました。コロナによる経済構造変化は不可避で、ある意味健全ともいえます。問題は変化のスピードで、3年かかるはずだった変化が半年のうちに起きているのです。経済システムは長い時間をかけた変化には対応できるが、数年の変化が数カ月に凝縮された結果、さまざまな問題が起きているのです。
米国の労働市場は今年6月以来、マーケットが予想していたより170万人も多くの雇用を生み出しました。ただし雇用回復は一様ではなく、先行きのある企業が採用を拡大する一方で、衰退に向かっている企業は生き残りをかけて大規模な人員カットを断行するか規模を縮小、あるいは運命を受け入れ廃業の道をたどっています。
ブッキング(予約、Booking)、 エンターテインメント(Entertainment), エアー(航空、Air), クルーズ(Cruise)、カジノ、ホテル(Hotel)など、いわゆるBEACHと呼ばれる業界では、特に新型コロナによる売上被害が深刻で、雇用の構造変化が進むなかで、これらの仕事は消えてしまうリスクにさらされています。世界観光協会の調べでは、観光業界全体ですでに1億4,000万人以上が職を失い、この状況が続くなら観光業に携わる人の二人に一人が失業するということです。また業種と関係なく、低、高スキル労働者の雇用が増える一方で、中スキル労働者、いわゆるゼネラリストと呼ばれるサラリーマンが不要とされる時代がきています。
もっとも暗い話ばかりではなく、米国、ヨーロッパや英国では、ロックダウンで外出を制限された若者達による一大起業ブームが起きているそうです。ただ、雇用市場が構造変化に対応するにはまだしばらく時間がかかるわけで、それまでの間、政府は従来の失業対策によって支えるしかありません。皮肉なのは、政府の手厚い雇用対策がゾンビ企業を延命させることになり、そのゾンビ企業どもが新しい起業の成長を妨げていることです。
10月末に楽天証券が実施した相場アンケート調査の結果によると、回答頂いた個人投資家4,761人のうち約41%(1,965人)が、11月のユーロ/円は「ユーロ安/円高に動く」と予想しています。
「ユーロ高/円安に動く」は、最も少ない約16%(759人)。「動かない(わからない)」は、約43%(2,037人)でした。
10月のユーロ/円の終値は121.91円。9月終値に比べて1.68円のユーロ安/円高水準でした。
10月末に楽天証券が実施した相場アンケート調査の結果によると、回答頂いた個人投資家4,761人のうち約31%(1,465人)が、11月の豪ドル/円は「豪ドル安/円高に動く」と予想しています。
「豪ドル高/円安に動く」は約16%(746人)で最も少なく、「動かない(わからない)」は約53%(2,550人)で半数を超えています。
10月の豪ドル/円の終値は73.56円。9月の終値に比べて約2.26円の豪ドル安/円高水準でした。
今後、投資してみたい金融商品・国(地域)
楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲
今回は、毎月実施している質問「今後、投資してみたい国(地域)」で、「中国」と「ユーロ圏」を選択したお客様の割合に注目します。
当該質問は複数回答可で、選択肢は、日本、アメリカ、ユーロ圏、オセアニア、中国、ブラジル、ロシア、インド、東南アジア、中南米(ブラジル除く)、東欧、アフリカ、特になし、の13個です。
図:質問「今後、投資してみたい国(地域)」で、「中国」と「ユーロ圏」を選択したお客様の割合の推移
2020年10月の調査で「中国」を選択した人の割合は18.25%、「ユーロ圏」を選択した人の割合は5.71%でした。
「中国」と「ユーロ圏」の割合は、2016年6月に行われた英国がEU(欧州連合)離脱を決めた国民投票を機に、ともに大きく下落しました。その後、しばらくはともに反発したり、横ばいで推移したりしましたが、特に新型コロナがパンデミック化した2020年3月以降、目に見えて2つの差が拡大しています。
新型コロナのパンデミック化以降、「中国」大幅反発、「ユーロ圏」小幅反発となっているのは、新型コロナの感染状況が大きく影響していると考えられます。「中国」では4月以降、目立った感染拡大は起きておらず、「ユーロ圏」では9月中頃以降、爆発的な感染拡大が起きています。
このような感染状況の差が、個人投資家の皆様が今後投資をしてみたい国(地域)を選択する際の、判断材料になっていると考えられます。
この数カ月間のコロナの感染状況は、国や地域によって異なります。日本やオーストラリア、ニュージーランドなど環太平洋の島国における感染状況は、爆発的に拡大している欧州や米国、一部の新興国に比べれば、比較的小規模です。
国や地域間の感染状況の差は、今後も、本設問の結果を左右する要因になるとみられます。引き続き、国・地域ごとの感染状況に、注目したいと思います。
表:今後、投資してみたい金融商品 2020年10月調査時点 (複数回答可)
表:今後、投資してみたい国(地域) 2020年10月調査時点 (複数回答可)
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