日経平均の見通し 

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

「米政治イベントを前にDIが後退」

 今回調査における日経平均の見通しDIは、1カ月先がマイナス13.17、3カ月先はプラス2.21となりました。前回調査の結果がそれぞれプラス6.11、プラス5.54でしたので、1カ月・3カ月ともにDIが悪化した格好です。1カ月先のDIがマイナスとなるのは7月調査以来です。

 回答の内訳グラフで具体的な状況を見てみると、1カ月先の強気派が前回の25.52%から18.86%へと減少していますが、中立派が半分近くを占めているため、弱気に大きく傾いたというよりは、米大統領選挙を直前に控え、慎重な見方が優勢になったと捉えた方が良さそうです。実際に、3カ月先の内訳グラフは、強気・弱気・中立がバランスを保っている印象です。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 また、ここ最近の日経平均は、「月末あたりに日経平均が大きく下落し、翌月の相場展開が警戒されるものの、いざ始まってみたら反発」という展開が7月・8月・9月と続いています。10月も月末の30日に354円安と急落しましたが、11月1日は318円高の反発となっており、最近のパターンを踏襲しています。

 さらに、決算シーズンや「スガノミクス関連」を手掛かりとする個別物色の動きも相場を支え、株価指数が弱い中でも、ソニーやパナソニックなど業績予想が上振れした銘柄はしっかり買われるなど、「森よりも木を見る」相場地合いになっています。

 一方の米国株については、大詰めを迎える米大統領選挙や欧米でのコロナウイルス感染再拡大を前にして、市場が慎重になりつつあるムードを反映していた面がありました。「報道ベースでみれば、バイデン候補が勝利するだろうが、11月3日の投開票後も一波乱あるかもしれない」、「春先のコロナ感染流行からの経済の持ち直し傾向は続くだろうが、感染再拡大によってシナリオ修正に迫られるかもしれない」といったように、「だろう」運転から「かもしれない」運転の色合いを濃くさせたことで調整となったと思われます。

 そのため、本格的な政治混乱やウイルス感染が実体経済への深刻な影響を与えるなど、警戒感が現実的な不安に発展しない限りは、株価水準やテクニカル分析の節目で買いが入ってくるかと思われますが、もうしばらくは弱含みのもみ合いが続きそうです。

 もっとも、このレポートが掲載される時点で米大統領選挙の結果は判明していない可能性がありますが、どちらの候補が勝利するにしても、大規模経済政策への期待から米株はいったん持ち直すと思われます。ただ、郵便投票をめぐって、トランプ陣営が反発しているなど、市場が選挙結果を織り込むタイミングが難しくなっています。

 とはいえ、仮に民主党政権に代わったとしてもコロナ対策には苦慮すると思われるほか、そもそも、バイデン氏自体が、民主党では党内の反左派勢力として大統領候補として選ばれ、大統領選では反トランプで選挙戦を戦ってきた面があり、必ずしも、本人への期待が高いかといえば微妙なところがあります。「何かをやってくれそう」感を演出できなければ、株価の上昇期待が進まず、むしろバイデン氏は選挙戦よりも勝利後の方に課題があるのかもしれません。