バイデン、トランプ、どっちが中国にとって有利?

 次に、中国が、どちらの候補が次期大統領になったほうが、自らに有利に働くかと考えているか、という問題を検証します。

 中国といっても、一括りに語ることはできません。いろんなプレイヤーがいろんなところにいます。ここでは、非常に大雑把ですが、国民、市場、政府という3つで考えてみましょう。

 まず国民ですが、意見は政府や市場関係者に比べて、最も多種多様でしょう。トランプの支持者は多いです。
(1)トランプは次々に米国を貶める政策を打っていて、結果的に中国が強くなる
(2)トランプのああいうディーラー的な性格、スタイルが好きだ
という理由をよく聞きます。

 逆にバイデンを支持する人には、
(1)トランプ政権下では米中関係が不安定で、米国への留学や移民も不確実になってしまう
(2)トランプのように品格品性に欠ける人間が大統領をやるべきではない
といった理由をよく聞きます。

 次に市場関係者ですが、トランプ候補の経済政策を好む人はいるようですが、主流な見方としては、トランプ候補がもたらすボラティリティを警戒する向きが強いようです。

 関税引き上げやファーウェイといった中国企業への制裁措置を含め、トランプの対中経済政策は抑圧的で、かついつどのような策を打ってくるか分からない、しかも持続性や安定性にも欠ける、よって、マーケットがトランプの一挙手一投足に翻弄されるという点を懸念してのことです。この意味で、市場関係者の間では、バイデン候補の当選を望む声のほうが多いというのが私の観察です。

 一方で、対中強硬的なトランプの対中政策が、習近平国家主席に圧力をかけることを期待する市場関係者やリベラル派経済学者もいます。

 この圧力が中国国内の市場開放、知的財産重視、規制緩和などを促進することにつながるだろうという希望的観測から、トランプ候補を「応援」するというわけです。しかし、決して主流とは言えませんし、中国国内でこの点を口に出すのはタブーです。