中国共産党の「正統性」に有利な、米国の劣化
ここからは、歴史の十字路に直面しているように見える米国の大統領選挙、およびその結果を、中国がどう見てきたか、というテーマを検証していきたいと思います。
まず、経済、軍事、教育、科学技術、そして政治体制やイデオロギーも含めて、米国は中国にとってライバルであり、中国はすべての分野で米国に追いつき追い越すことを本気で狙っています。
そうすることによってはじめて、民主的に選ばれたわけではない中国共産党の為政者たちは、自らの国民から認められ、末永く中国の地を統治することを許されるからです。
中国共産党は、選挙という手続きではなく、政策という結果で、被統治者を納得させるしかないのです。私はこれを「正統性の問題」と表現してきました。今後も頻繁に出てくる言葉だと思いますので、覚えておいてください。
競争相手であるライバル・米国の分断と劣化を、程度はどうであれ、中国が望まない、喜ばないはずはありません。
仮に、これから選挙の過程や結果をめぐって、どちらかの候補がそれを認めない、訴訟を起こす、結果米国の統治機構が機能不全に陥ります。
その過程で、国民が暴動を起こしたり、内乱に陥ったりすれば、中国共産党は間違いなく「米国の民主主義はもはや機能しない」と大々的に宣伝(プロパガンダ)し、逆に、「中国の特色ある社会主義」という自らの政治体制やガバナンスの優位性を強調することでしょう。
言い換えれば、「米国の分断や劣化は、中国共産党の正統性を強化する」ことにつながるのです。