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 最近の大型投資信託の登場もあり、『ESG投資』は日本にもすっかり定着した感があります。ところが、ファンドフロー・データによると、主要国と比較して日本の『ESG投資』の金額は大きく出遅れているようにみられます。日本企業の環境、社会、企業統治についての取り組みが国際的に劣っている訳ではないと考えられるため、企業のアピールなどによって投資家の認識が高まれば、日本のESG投資がさらに増加することが期待されます。

【ポイント1】注目が高まる『ESG投資』

『ESG投資』は財務情報だけでなく、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)といった非財務面の要素も考慮した投資です。環境や社会に配慮した経営を行い、企業統治に優れた投資先を選別することによって、潜在的なリスクを排除し、長期的な収益確保を目指します。

 社会的課題であるSDGs(持続可能な開発目標=Sustainable Development Goals)の達成に向けた取り組みが、社会・企業の使命となる中、その達成プロセスとなる『ESG投資』への注目が高まっています。

 近年では、日本企業の間でも、コーポレートガバナンスの重視、働き方改革などの社会面への配慮、カーボン排出量削減などの環境問題への取り組みなど、ESGの取り組みは進んでいると考えられます。

【ポイント2】国際平均に並ぶ日本企業のESGスコア

 日本企業のESGへの取り組みを、主要各国と比較するため、MSCI社が作成するESG評価を集計し、国別の平均ESGスコアを求めました(9月28日時点、出所はFactset)。対象はMSCI ACWI(新興国を含む世界株式指数)採用企業です。

 これによると、日本企業の平均ESGスコアは5.1で、MSCI ACWIの平均スコアと同水準となっています。内訳をみると、3つの要素のうち環境のスコアは5.6、社会のスコアは5.2と、それぞれ全体平均を上回っています。

【今後の展開】キャッチアップが見込まれる日本企業への『ESG投資』

 米国に本社を置く金融調査会社であるEPFRグローバルによると、このところ日本株への『ESG投資』の資金流入は加速していますが、金額的には米欧やグローバル株式と比較すると極端な少額にとどまっています。日本企業に対するESG評価が国際的に標準的な水準にあることを勘案すると、日本企業に対する『ESG投資』は、今後、資金流入が加速する余地が大きいと考えられます。そのためには、企業自らがESG面の取り組みのアピールを一層強化するなど、投資家に対する働きかけの積極化が進むことが望まれます。