20年7-9月決算見通し、主要指標改善も多額の減損処理で軒並み減益か

 香港株式市場ではこのところ、中国本土の銀行銘柄が買われる展開となっているが、BOCIによると、これは国内経済の回復を含む複数の要因を受け、市場の過度の悲観ムードが後退したため。実際には主要業務指標が回復に向かう半面、20年7-9月期も多額の資産減損損失を計上する可能性が高く、セクター全体のファンダメンタルズの改善、特に採算性の底入れ時期は10-12月期にずれ込む見通しという。ただ、いったんファンダメンタルズが回復すれば、ROE(自己資本利益率)の改善が新たな支援材料になるとみて、銀行セクター全体に対する強気見通しを継続している。

 20年8月末時点で、商業銀行の資産、負債はいずれも前年同期比11.3%増と、6月末の伸び率をそれぞれ0.3ポイント、0.5ポイント上回った。BOCIは9月に社会融資総量(TSF:実体経済の流動性を示す中国独自の指標)と与信規模の拡大が見られた点に触れ、7-9月には銀行業務の規模の拡大が加速したとみている。

 中国経済の回復を受け、工業企業の債務返済能力は回復傾向を示しており、インタレスト・カバレッジ・レシオ(金融費用に対する事業利益の比率)は8月に6.04倍まで改善した。BOCIは銀行資産が7-9月も健全性を維持したとの見方。一段の資産劣化リスクは後退しつつあるとみている。

 中国銀行保険監督管理委員会(CBIRC)によれば、国内商業銀行は20年に、総額3兆4,000億元規模の不良債権処理を迫られる見込み。BOCIの推計では、商業銀行の20年通期純利益はシナリオ別に、前年比7.82%減-3.65%増の範囲となる見通しという。

 NIM(純金利マージン)は7-9月もほぼ横ばいを維持する見込み。◇貸出金利の安定推移◇銀行間金利および債券イールドの回復◇預金コスト管理の強化--をその理由としている。

 一方、主要業務指標が改善しても、資産減損損失の計上が響き、7-9月の業績は悪化する見込み。BOCIはカバー銘柄の多くが前年同期比10%前後の減益になるとみる。ただ、引当前業務純益に関しては回復が期待できるという。

 銀行銘柄の現在株価は20年予想PBR(株価純資産倍率)で0.50倍の水準。BOCIはH株銀行銘柄の株価が底入れした理由として、◇マクロ経済の回復◇政策の調整◇現在株価の値ごろ感--を指摘。銀行セクターのラリーが今後も続くとみている。個別では、中国郵政儲蓄銀行(01658)や中国建設銀行(00939)など、株価バリュエーションの回復余地が大きく、かつファンダメンタルズが健全な銘柄が有望との見方。また、招商銀行(03968)の株価の先行きに対して強気見通しを継続し、リテール銀行業務の優位性や高いリスク管理手腕、ウェルスマネジメントおよびフィンテック分野の先進性などを同行の強みに挙げている。