決算レポート:ディスコ
1.2021年3月期2Qは、35.5%増収、39.3%営業増益
ディスコの2021年3月期2Q(2020年7-9月期)は、売上高475億6,100万円(前年比35.5%増)、営業利益140億7,600万円(同39.3%増)となりました。今1Q決算時の今2Q会社予想(会社予想は翌四半期の予想のみ)、売上高423億円、営業利益116億円を上回る好業績となりました。
また、全社出荷額は今1Q499億円に対して今2Qは418億円と減少したものの、会社予想の398億円は上回りました。
会社予想を上回る好業績だった理由は、検収が会社想定以上に進んだためです。特にアジア向けの量産用装置(ダイサ、グラインダ)の検収が進みました。
前期からディスコは、装置の収益認識基準をそれまでの工場出荷基準から、顧客工場に装置を据え付け適正に動くか検収した後に売上計上する検収基準に変更しました(消耗品(ブレード)は出荷基準を継続)。前期から今期にかけては、出荷の増加に対して検収が追い付かず、出荷額に売上高(検収額)が追い付かない四半期がありましたが、ディスコ側と顧客側が検収に慣れてきたため、出荷に対して売上が追い付くようになっています。
検収は顧客の都合で遅れる場合があるため、ディスコは業績見通しを保守的に見積もっているもようですが、今2Qは会社予想を上回る実績を上げました。今3Qも会社予想に対して上方修正の余地があると思われます。
表6 ディスコの業績
2.量産用装置の引き合いが増加中
会社側によれば、今期に入って下降局面入りした新規の引き合い(受注に先駆けて顧客から寄せられる受注確度が比較的高い引き合い)が、8月以降増え始めたもようです。特に量産用装置の引き合いが増えているもようです。ただし、増え方は急激なものではなく安定したものであるもようです。
西側半導体メーカーから9月15日以降半導体の調達が出来なくなったファーウェイについては、今後スマホのシェアが低下すると予想されますが、そのシェアを奪うべく、アップル、サムスン、シャオミ、オッポ、ヴィーボなどの大手スマホメーカーが積極的な5Gスマホの拡販策を採っているもようです。これによって、5Gスマホ用チップセットが増産になっています。これが量産用のダイサ、グラインダの需要にも結び付いてきたと思われます。
これに伴い、後工程で重要な台湾、中国のOSAT(オーサット。後工程専門業者)からの引き合いが増えてきました。
また会社側によれば、メモリ向けの引き合いも一部の顧客向けで増えてきたもようです。
楽天証券ではこれらの状況に鑑み、2021年3月期、2022年3月期の楽天証券予想業績を微調整します。2021年3月期は、前回予想の売上高1,650億円(前年比17.0%増)、営業利益480億円(同31.7%増)から、今回は売上高1,670億円(同18.4%増)、営業利益450億円(同23.5%増)へ、2022年3月期は、前回予想の売上高1,900億円(同15.2%増)、営業利益580億円(同20.8%増)から、今回は売上高1,950億円(同16.8%増)、営業利益570億円(同26.7%増)へ修正します。
月次受注が大底にあると思われること(グラフ8)、新規引き合いが増えていることを合わせて考えると、全社出荷額は今後増加トレンドに入ると予想されます。
一方で、世界の半導体製造装置ビジネスが新型コロナ禍の中でありながら正常化するにつれて、販管費や研究開発費がある程度増えるようになりました。また、量産用装置は研究開発用や特殊用途の装置に比べてやや採算が低いようです。今回の楽天証券予想にはこのコストアップ分を考慮しています。
利益は多少下方修正しましたが、今期、来期と業績拡大が続くと予想されます。
グラフ7 ディスコ:売上高、受注高、出荷額(連結ベース)
グラフ8 ディスコの月次受注高
3.目標株価は3万5,000円を維持する
今後6~12カ月間の目標株価は前回の3万5,000円を維持します。2022年3月期楽天証券予想EPS 1,138.3円に今のPER30倍強の高い評価(2021年3月期楽天証券予想ベースのPERは32.4倍)が続くと想定しました。
量産用装置の引き合いが増え始めたことを重視したいと思います。引き続き投資妙味を感じます。
本レポートに掲載した銘柄:ディスコ(6146)