20年上期は軒並み2桁減益、下期の回復ペースの加速に期待

    新型コロナウイルスに起因する経済活動停止などの影響で、20年上期にはガス供給セクター(都市ガス)全体で、小売販売量の減速傾向が見られた。利幅は全般に改善したものの、新規利用者向けのガス管接続業務の縮小も響き、新奥能源(02688)を除く各社が6月中間期に減益決算を余儀なくされた。ただ、BOCIは国内の経済活動の正常化に伴い、下期にはガス販売量とガス管接続業務の伸びがそろって加速すると予想。利幅も上期比で改善する見通しを示し、セクター全体に対して強気見通しを継続した。個別では中国ガス(00384)と北京控股(00392)をトップピック銘柄としている。

    BOCIのカバー銘柄の20年6月中間決算を見ると、前年同期比14%の増益を達成した新奥能源以外、4社が18-25%の2桁減益だった(決算月が3月の中国ガスは含まない)。上期のガス販売量はほぼ前年同期並みか1桁台の減少だったが、唯一の例外は昆侖能源(00135)。新たな都市ガス・プロジェクトの取得が寄与し、20%増を達成した。同社が19年下期から20年上期にかけて取得した新規プロジェクトの件数は保有プロジェクト全体の23%相当。新規分のガス小売販売量は上期に、同社全体の44%を占めた。

    上期のガス販売量の内訳を見ると、旧正月休暇が約1カ月延びた影響で、昆侖能源と新奥能源を除く4銘柄の工業用ガス販売量が前年同期並みか減少。商業用に至ってはそれぞれ7-27%減と、全面的に落ち込んだ。BOCIはホテルや観光施設の業務が正常化するまでには外食業以上に時間がかかるとし、プールや浴場施設に関してはさらに長期間を要する可能性を指摘している。上期にはまた、昆侖能源を例外に、車両向けのガス販売量も2桁減。唯一需要が伸びたのは、“巣ごもり”効果のあった住宅向けで、上期の販売量は個別に4-31%増加した。ガス販売業務以外では、新規の住宅顧客向けのガス管接続業務が新型コロナで大打撃を受け、上期の接続件数は3-32%縮小している。

    川上の天然ガス価格の下落やガス調達構成の最適化で、販売量1立方メートル当たりの利益は上期におおむね0.02-0.03元増えた。昆侖能源は例外的に0.03元の落ち込みとなったが、工業顧客に便宜を図った値下げなどが原因。BOCIは下期の正常化を見込む。

    中間決算内容にポジティブサプライズが見られなかったことなどから、都市ガス各社の株価は8月の決算発表以来、軒並み調整している。中でも値下がり率が大きいのは昆侖能源。パイプライン資産の売却が来春まで期待できないとの見方や、ヘッジファンドによる売りが同社株の下げを加速させた。BOCIのトップピックは、目標株価までの上値余地が大きい中国ガスと北京控股。うち中国ガスの株価については、説得力のある理由なしに過去3カ月で19%値下がりしたとし、11月後半に予定される20年9月中間決算の発表を受けた好材料に期待を寄せている。また、北京控股のバリュエーションはカバー銘柄の中で最も低く、20年予想PER(株価収益率)で4.5倍にとどまる点を指摘している。