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 オフィスビル仲介大手の三鬼商事は、オフィスビルの『空室率』や平均賃料を毎月公表しています。2020年8月の東京ビジネス地区の『空室率』は3.07%と30カ月ぶりに3%を上回りました。新型コロナ感染拡大を契機にテレワークが急速に普及し、オフィスの在り方も変わってきています。コスト削減を見込み、都心のオフィス面積縮小や地方への分散といった動きがみられるなど、今後の展開が注目されています。

【ポイント1】8月の東京のオフィスビル『空室率』は3%台に上昇

オフィス縮小に伴う解約の影響などがみられる

 三鬼商事が9月10日に発表した東京ビジネス地区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)の2020年8月のオフィスビルの平均『空室率』は3.07%と、2018年2月以来30カ月ぶりに3%台に上昇しました。既存ビルでオフィス縮小に伴う解約の影響がみられたことや、新築ビルの成約の動きが小規模にとどまったことが背景です。

 内訳をみると、8月の新築ビルの『空室率』は、新築ビル2棟が募集面積を残して竣工(しゅんこう)したことなどから、前月比0.33ポイント上昇し2.46%となりました。既存ビルは同0.30ポイント上昇の3.09%でした。大型解約は少なかったものの、中小規模の解約が相次ぎました。

【ポイント2】平均賃料は前月から下落

80カ月ぶりに上昇ストップ

 2020年8月の東京ビジネス地区の平均賃料は、前月比▲0.83%(▲192円)の坪当たり2万2,822円でした。2014年1月から続いた平均賃料の上昇は、80カ月ぶりにストップしました。前年同月比は+4.76%(+1,038円)でした。

 平均賃料の内訳は、新築ビルが前月比+281円の3万3,235円、既存ビルが同▲188円の2万2,588円でした。

【今後の展開】テレワークの定着など、ニューノーマルへの適応が進む

 テレワークの動きはコロナ禍後も一定程度定着するとみられています。大手IT企業などでは、通勤手当を廃止し、在宅勤務手当を支給する動きも出ています。これまでの毎日の出勤を前提とした働き方や対面でのビジネス、それらに合わせたオフィスの在り方は大きく変わり、中長期的にニューノーマルに適応していくと予想されます。

 これを受け『空室率』は今後も上昇傾向が続く可能性があります。平均賃料については大型解約の動きはみられないことなどから、当面大きく下落する可能性は低いとみられます。ただし、既に連続上昇が途切れたこともあり、今後の『空室率』の推移と平均賃料への影響が注視されます。