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国内企業は、内需、外需関連問わず世界的な新型コロナの感染拡大による景気急減速の影響を受けました。現時点では新型コロナの収束は見通せない状況にあります。企業はこうした厳しい状況に対処するため、『事業再編』に踏み出しています。今回の特徴は、業容の拡大を狙って海外企業の傘下入りをしたり、業績良好な子会社を売却するなど、聖域を設けず『事業再編』に踏み出したことにあります。
【ポイント1】聖域を設けず『事業再編』を実施
国内の企業の『事業再編』は、業績不振部門のリストラや売却、海外企業の買収などにとどまっていました。現時点では新型コロナの収束は見通せない状況にあります。こうした状況に対処するため、企業はかつての主力事業や優良子会社であっても対象に聖域を設けず『事業再編』に踏み出し始めました。
【ポイント2】海外企業との連携や優良子会社の売却などを実施
8月21日、日本ペイントHDはシンガポール塗料大手のウットラムグループの子会社になると発表しました。塗料事業を統合し、20兆円の世界市場を一体で開拓します。化学などの素材大手で初めてアジア企業の傘下入りとなります。ウットラムが第三者割当増資を引き受け、日本ペイントへの出資比率を現在の39.6%から58.7%に引き上げます。同時に両社の塗料事業を統合し、日本ペイントに集約する方針です。
武田薬品工業はアリナミンなどを有する大衆薬事業の子会社を米投資ファンド大手ブラックストーン・グループに売却すると正式に発表しました。金額は約2,400億円です。アイルランド製薬大手シャイアーを6兆円以上で買収した結果、膨らんだ負債を圧縮し、主力の医療用の新薬開発に経営資源を集中します。
20社を上回る上場子会社を2社まで削減した日立製作所は、報道によると残る日立建機と日立金属の内、日立金属を売却する検討に入ったと伝えられています。
【今後の展開】国内の『事業再編』も一歩進んだ段階に
日本ペイントのように成長力底上げのため、自らの意思で海外企業の子会社になるという事例は、これまでほとんどみられませんでした。優良子会社の売却も限定的でした。これは国内企業の『事業再編』が一歩進んだステージを迎えたことを意味し、今後事業の入れ替えなどによる『事業再編』はさらに加速していきそうです。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。