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確定拠出年金の最適な運用法は?
山崎 元
ホンネの投資教室
楽天証券経済研究所客員研究員の山崎元の提供レポートです。経済やマーケット、株式投資、資産運用のノウハウと考え方など幅広い情報提供をおこなってまいります。資産運用の参考にお役立てく…

確定拠出年金の最適な運用法は?

2013/11/15
・確定拠出年金のメリット
・NISAの最適な利用法
・確定拠出年金とNISAが両方ある場合
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はじめに、以下の問題を考えてみて欲しい。

(問題)

金融資産保有の合計額が1600万円で、NISAの利用枠が100万円と、DCに500万円の運用資金がある会社員が、リスク資産に半分投資しようと考えた場合、どのように運用するのがいいか?

具体的なイメージが湧くだろうか? 筆者の答えは、本稿の末尾で述べる。

確定拠出年金のメリット

確定拠出年金は、爆発的とは言えないまでも、徐々に導入企業が増えて、普及が拡大している。会社型の確定拠出年金を持つ会社の社員は、自分が確定拠出年金に積み立てる金額を選択できる場合があるが、可能な限り大きな金額で確定拠出年金を使うことが得になる場合が多い筈だ。

また、実は、「個人型」の確定拠出年金を使うことが出来るのだが、確定拠出年金をまだ利用していない人も多い。民間の会社勤めで、厚生年金に加入しているが、会社独自の企業年金制度を持っていない会社に勤めている人は、毎月2万3千円までの掛け金の範囲で、個人型の確定拠出年金を利用できる。

確定拠出年金は、掛け金が所得控除できることと、運用益が途中非課税であることの、二つの税制上のメリットを持っている。一定以上の所得のあることが予想できる人にとっては、「ほぼ確実に儲ける(得になる)ことができる」といえる数少ない金融サービスの一つだ。

今のところ、個人型の確定拠出年金を積極的にビジネス展開している金融機関は多くないが、顧客の獲得や、リスク性商品への導入契機ということも含めて、もっと可能性を追求していい分野だ。

しかし、確定拠出年金の運用方法については、正しい知識が浸透していないように見える。典型的な例が、しばしば確定拠出年金向けに用意されることのある「ライフサイクル・ファンド」だろう。

ライフサイクル・ファンドは、内外の株式と債券の両方に投資するバランス・ファンドで、顧客の年齢やターゲットとする年限に応じてアセット・アロケーション(資産配分)を変化させる。投資家がリスクタイプを自分で選ぶ形式のものもあるし、運用会社側がターゲットとなっている年限(通常はリタイアメントの年)に向かって、徐々にリスク資産の比率を落として行くような運用を行うことが一般的だ。

「若いうちはリスクを取る運用が出来る。高齢になると、リスクは取らずに、安定運用の比率を増やす方がいい」という通念(必ずしも正しくないが)を反映した商品設計だ。

しかし、ライフサイクル・ファンドは、確定拠出年金に適した商品だとはいえない。はっきり言うと、「明らかにベストではない」。

最大の理由は、税制上のメリットを最大限に活かしていないからだ。

前述のように、確定拠出年金には、運用益に対する課税を将来まで繰り越すことが出来る税制上のメリットがある。これを最大限に活かすためには、自分が運用しているアセット・クラス(資産分類)の中で、最も税制上のメリットが大きな資産クラスを確定拠出年金に「割り当てる」ことがポイントだ。

例えば、「リスクがあるけれども期待リターンが高い資産A」と「リスクは殆ど無いけれども期待リターンが低い資産B」の2つの資産クラスがあって、資産Aと資産Bを50%ずつ持つのがリスクとリターンの上で最適だと判断する人がいるとしよう。この人が確定拠出年金を使う場合、税制上のメリットを最大化するには、資産Aでの運用を優先的に確定拠出年金に割り当てるのが最適だ。確定拠出年金の中で資産Aと資産Bを半々に持つのは、最適解ではない。

将来のための資産運用は確定拠出年金「だけ」で行われるものではない。個人にとっては、運用資産全体の状態が問題であり、全体のリスクとリターンを最適化する中で、確定拠出年金での運用部分をどう使うかという発想が大事だ。

端的にいって、バランス・ファンドは確定拠出年金には不向きだ。

しかし、行動経済学が「メンタル・アカウンティング(心の会計)」という言葉で指摘するように、多くの個人は、確定拠出年金を他の自分の運用資産と分けて別個で考える傾向があるので、税制利用に明らかな有利・不利があることに気付かない。

筆者は、かつて、確定拠出年金向けにライフサイクル・ファンドをラインナップしたメガバンクの商品企画の担当者にこの問題を指摘したことがある。

率直にいって、担当者は、税制利用の最大化について理解せずに、主として「ライフサイクル・ファンド」というネーミングが洒落ていることと、これが米国でも使われていることとに魅力を感じて確定拠出年金向けの商品として採用したようだった。

また、彼は、筆者の指摘に対して、次のように言い訳した。

「確かに、確定拠出年金のベストな運用という意味では、山崎さんの言う通りかも知れません。しかし、当行の売り子は、そのようなことが分かるレベルではないので、販売の現場を考えると、ライフサイクル・ファンドが無難だと考えました」。

現場の「売り子」はこの発言をどう聞くだろうか。確かに、商売としては、これも一つの選択かも知れない。

しかし、投資家側では正しい理解を持っておきたい。

NISAの最適な利用法

来年からスタートする予定のNISA(少額投資非課税制度)の適切な使い方も確定拠出年金の使い方と似ている。個人にとって、NISAはどのように使うのが、最も賢いやり方か。

「利用者側から見た」NISAでの正しい運用方法を四原則の形でまとめると以下のようになる。

原則その一、「NISA枠は、大きく、長く、使え」。

何はともあれ、NISAで使える税制上の優遇枠を使わないのはもったいない。投資できる資金が既に十分あるなら、早い時期に100万円の枠を使い切って投資してしまうのが得な理屈だ。

優遇期間をフルに使えなくなるので、積立投資は不適切だ。(注;ドルコスト平均法が「有利」だというのは誤解である。「気休め」以上の意味はない)。また、通貨選択型を含めた毎月分配型投信など高分配の商品は、分配金が税制優遇された形で再投資できないので不適切だ。

原則その二、「NISA口座にはリターンの高い資産の運用を割り当てよ」。

NISAは、運用益に対する課税を免除する優遇措置だ。従って、自分の運用資産全体の中で、リターンが高いと思う運用資産の運用を日本版ISAの運用に割り当てるのが正しい。

例えば、株式で500万円、債券・預金で500万円運用しようとしている投資家がいるとして、株式の方が期待されるリターンが高いと思うなら、NISAの口座には、株式の運用を集中させるのが正しい。確定拠出年金と同様だが、NISAの運用にあって、バランス・ファンドは適切な選択肢ではない。

原則その三、「NISA口座ではバランス良く分散投資された対象に投資せよ」。

現在のNISAの制度設計では、売却してしまった資金を再投資して再び税制優遇の対象とすることができない。したがって、長期間持ち続けることが出来るものを投資対象に選ぶことが望ましい。

仮に、株式の個別銘柄に投資しているとすると、5年間の間には、株価が上がり過ぎだと判断したり、業績見通しが悪化したりした場合など、「売りたい」と思うようになる時が訪れる公算が大きい。しかし、途中で売却してしまうと、それ以後の期間について、税制優遇される運用額が小さくなってしまう。

同様な理由で、株式に投資する投資信託でも、特定の業種やテーマなどに特化したものはNISAでの運用には適さない。

また、為替レートに関する判断にも同様のことがいえるので、外国債券に投資する投資信託のような商品も適切な運用対象ではない。

原則その四、「NISAは低コストで運用せよ」。

NISAに限らないが、投資家から見て手数料は「確実な(リスク・ゼロの)マイナス・リターンだ」。NISAの場合は、長期で持ち続ける投資を行うべきなので、投資信託でいうと信託報酬に該当する継続的に掛かる手数料の大きな運用商品ははっきり損だし、入口で手数料が掛かるノーロードではない投資信託は「論外」と言い切りたい。この点は、利用者と金融機関の間で利害が対立するポイントだが、利用者の立場から考えると、株式投信でもアクティブ・ファンドは手数料が高すぎて不適切だ。

以上の四原則から考えると、NISAにあって、顧客側では、多くのケースでベストな運用は、株式のインデックス・ファンドだ。

長期的に持ち続けるに際してリスクとリターンの効率を改善するには、日本株だけでなく、外国株のインデックス・ファンドにも分散投資する方がいい。

例えば、一年間に100万円のNISA投資枠を、日本株のインデックス・ファンド(TOPIXに連動するもの)に50万円、先進国株のインデックス・ファンド(MSCI-KOKUSAI)に50万円投資する、といった運用が、利用者側から見るとほぼベストなものになる可能性が大きい。

そして、金融機関には厳しいが、特に日本株では信託報酬が安いETF(上場型投資信託)を使った運用が最適だ。従って、ETFが利用できない銀行では、NISAの口座を持たない方がいいということになる。

確定拠出年金とNISAが両方ある場合

 簡単に復習すると、確定拠出年金もNISAも「運用益非課税」というメリットを最大限に活かすには、自分の運用全体の中で、期待リターンが高い資産を集中的に割り当てるべきだという点が最大のポイントだった。

もちろん、何れの制度も使わないと「もったいない」。使える資金枠は最大限に使いたい。加えて、期待リターンの高い資産を集中的に割り当てるのだから、たとえば、バランス・ファンド(株式と債券の両方に投資するファンド)がこれらの運用にあって最適な投資対象になることは殆ど無い。

NISAと比較すると、確定拠出年金は、利用できる商品ラインナップによって利用価値に大差があるが、運用対象のスイッチングが出来る点で運用上NISAよりは柔軟性がある。但し、原則60歳まで引き出せないので、急にお金が必要になった場合に、確定拠出年金にしか金融資産がない、という状態になるとまずいとはいえる。

筆者は、先日、ある大手エレクトロニクス・メーカーのグループ企業に、そのグループが使っている確定拠出年金の運用選択肢をどのように使ったらいいかということをテーマに話をさせて貰ったが、彼らの運用商品選択肢は、何れもローコストなインデックス・ファンドを過不足無く並べて、余計な選択肢のない(ここが大事!)加入者に対して良心的な、見事なものだった。このような確定拠出年金を利用できる人は幸せだ。

さて、それでは、NISAは日本の成人なら誰でも利用できるとして、NISAと確定拠出年金の両方を利用できる人は、これらの制度を使って、どのように運用すべきか。

自分の運用全体の中で期待リターンの高い資産を割り当てることが合理的であることは当然として、両者をどう使い分けるべきか。本稿の冒頭の問題を考えてみよう。

両者の使い分けを考える上では、一つには、確定拠出年金はスイッチングが可能で、NISAは資産を売却してしまうとその金額だけ非課税枠から外れることの差が重要だ。もう一つの注目点は、確定拠出年金では、一般のリテール向けに売られている商品よりも運用手数料の安い商品が運用選択肢の中に用意されている場合がある。端的にいって、外国株のインデックス・ファンドで信託報酬が0.2%〜0.25%くらいのものがラインナップされている場合がしばしばある。こうしたケースでは、確定拠出年金を外国株の運用に振り向けることで、運用に掛かるトータルなコストが抑制できる場合がある。

一方、NISAでは、できるだけ途中で売却したくならないような、分散投資が行き届いた安定性のある運用対象がいい。確定拠出年金に外国株式のインデックス・ファンドを割り当てた場合、NISAでは、TOPIXに連動するETFがベストな選択肢になる可能性が大きい。

筆者が、近著「全面改定 超簡単 お金の運用術」(朝日新書)で勧めている個人向けの運用簡便法に基づいて考えた解答例は以下の通りだ。

NISAにはTOPIX型インデックス・ファンドを100万円、DCでは外国株の株価指数(MSCI−KOKUSAI)に連動するインデックス・ファンドを400万円、DCで残った100万円は国内株式(TOPIX連動型)のインデックス・ファンドを買い、通常の証券口座で200万円TOPIX連動型のETFを買う。そして、残りの800万円は、銀行預金・個人向け国債(10年満期・変動金利のタイプ)・MRFなどで運用する。

全体を最適にしながら、確定拠出年金、NISAに、全体の中の一部の役割を割り当てて考え方の中で、丁寧に損得を考えることがポイントだ。資産を動かすにあたって不便なNISAから、手数料の安い運用商品で順番に埋めていくと正解に早く近づく。多くの場合、DCとNISAが両方使える場合、NISAに対してはTOPIX連動型のETFがベストな解になる投資家が多いだろう。

(冒頭の問題の解答例)

NISAでTOPIX連動型ETFを100万円、
DCで「外国株式」を400万円、「国内株式」を100万円、
DC・NISA以外で「TOPIX連動型ETF」を200万円、
「預金、MRF、個人向け国債等」を800万円、買う。

(注;あくまでも、山崎元個人の判断による運用方法の一例です。詳しい根拠は、前掲書をご参照下さい)

(解答例の図解)

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