毎週金曜日夕方掲載
本レポートに掲載した銘柄:ディスコ(6146)
特集:半導体製造装置セクターのフォローアップ
1.2020年5月の世界半導体出荷金額(単月)は、前年比6.5%増、前月比9.1%増と堅調な動き
2020年5月の世界半導体出荷金額(単月)は、351億1,400万ドル(前年比6.5%増、前月比9.1%増)となりました(表1)。前年比は2019年12月以来6カ月連続で一ケタながらプラスであり、堅調な回復を示しています。前月比では4月の14.4%減のように大きなマイナスになる月もあり、まだ不安定ですが、半導体市場の回復に向けた動きは続いていると思われます。
向け先地域別に見ると、南北アメリカが4月前年比29.7%増、5月同29.8%増と大きな伸びとなりました。データセンター投資が続いていると思われます。日本と中国を含むアジア・太平洋も緩やかながら回復しています。ただし、欧州は4月、5月ともに前年比19.4%減と大きな減少になりました。欧州が新型コロナウイルス禍による深刻な不況に入りつつあることを示していると思われますが、欧州は半導体市場としては小さいので世界の半導体市場への影響は軽微と思われます。
一方、世界半導体出荷金額(3カ月移動平均)の長期グラフ(グラフ1)を見ると、先端半導体から汎用半導体までを含む半導体デバイス市場全体では、現在は新型コロナウイルス禍の影響で足踏みしているところと思われます。ただし、先端半導体をけん引役として上向きに転じる時期が近付いていると思われます。
表1 世界半導体出荷金額(単月)
グラフ1 世界半導体出荷金額(3カ月移動平均)
2.先端半導体市場は好調な動き。TSMCが2020年12月期2Q決算を公表。
前述のように半導体デバイス市場全体では、長期トレンドで見ると回復途中の足踏み状態にあると思われますが、先端半導体の市場を見ると、勢いのよい動きが見られます。
台湾の世界最大の半導体受託製造業者TSMCの6月の月次売上高は前年比40.8%増となりました(グラフ2)。2020年1-3月期に前年比42.0%増と高い伸びを示した後、4月同28.5%増、5月16.6%増と鈍化しましたが、6月に再び盛り返しました。1-3月は5Gスマホ向けチップセットの増産にAMD向けパソコン用CPU、サーバー用CPUの増加が加わったと思われます。4月、5月の鈍化は5G向けが一服したためと思われますが、6月の大幅増加は今年9月で出荷が終わるファーウェイ向けの駆け込み出荷と言われています。
10月からファーウェイ向けはなくなりますが、AMD向け、エヌヴィディア向けの増加や、新たに加わると言われているソニー向けイメージセンサーの受託生産など、5G用チップセット以外の受託生産があるもようなので、高い伸びが今後も続くと思われます。
7月16日付けでTSMCは2020年12月期2Q(2020年4-6月期)を公表しました。今2Qは、売上高3,107億台湾ドル(1台湾ドル=3.62円、1兆1,247億円)(前年比28.9%増)、営業利益1,310.9億台湾ドル(同71.8%増)と、前2Q業績が停滞していたこともあり、大幅増益となりました。
今2Qの用途別売上構成比を見ると、スマートフォン向けが今1Q49%から今2Q47%へやや低下し、HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング、高性能パソコン、サーバー用CPUやグラフィックチップなど)向けが同じく30%から33%に上昇しました。いずれも今1Qは前年比40%以上、今2Qは30%以上の高い伸びを示しています。
今2Qのテクノロジー別売上高では、7ナノが前年比2.2倍、前期比2.9%増と好調でした。売上構成比では7ナノが今1Q35%、今2Q36%と主力事業になっています。
また、TSMCは2020年12月期設備投資計画を見直し、2020年12月決算発表時に150~160億米ドルとしていた計画を160~170億米ドルに上方修正しました。先端半導体の需要が活発なので、私見ですが今期は最終的に180億米ドル程度へ達する可能性があります(前回の楽天証券予想の200億米ドルは強気すぎました)。来期2021年12月期は、5ナノの増強投資、3ナノの初期投資が予定されているため、今期よりも増えるか、少なくとも減らないと思われます。
楽天証券では、TSMCの2020年12月期業績予想をやや下方修正しました(表2)。前回予想が強気すぎたためですが、変化率は大きく今後も好業績が続くと予想されます。株価も更なる上昇が期待できそうです。