信用買いの整理が進んだ銘柄は株価の値運びが軽くなる

次に、株価指数が軟調だったころから株価の上昇が続いている銘柄の信用残高の推移をみて、何か特徴がないか探してみることにしましょう。

まずは安藤ハザマ(1719)です。最近の株価は着実に上昇を続け、6月20日には610円の高値をつけました。

信用買い残高をみてみると、売買高を伴って上昇した昨年11月前後に急増し、昨年12月13日時点では17,342,200株にまで達しました。ただ、株価は一旦調整したものの、信用買い残高がその後増えることなく順調に減少していったことから、調整は浅く済みました。その後も信用買い残高の減少は進み、4月以降は再び高値追いの状況になっています。4月以降は信用売り残高が増加したことで、ネットの信用買い残高はゼロに近い水準にまで減少、信用倍率も昨年12月のピーク時の16.89倍から、今年6月6日には1.11倍にまで低下しています。

このように、信用買い残高の整理が進んだ銘柄の株価は、需給面からみて上昇しやすいのです。信用買い残高減少の背景には、やはり実需の現物買いの可能性が考えられます。信用買いの返済売りを、現物買いが吸収していったことで、信用買いが現物買いに置き換わったのです。現物買いは信用買いと違って返済期限はありませんから、信用買いより格段に売り圧力が弱まることになります。

 

信用残高の推移(抜粋)  安藤ハザマ(1719)

日付 売残 買残 信用倍率
2013年10月18日 1,136,000 11,400,200 10.04
2013年11月1日 1,734,100 16,158,700 9.32
2013年12月13日 1,056,200 17,342,200 16.42
2014年1月31日 1,255,400 10,202,100 8.13
2014年2月28日 1,004,600 7,255,300 7.22
2014年4月11日 1,276,000 4,740,700 3.72
2014年5月23日 1,722,300 2,633,300 1.53
2014年6月6日 2,220,600 2,474,700 1.11
2014年6月13日 2,292,500 2,567,400 1.12

「売り長」の銘柄は株価が上昇しやすい

最後はクラリオン(6796)です。今年の3月下旬以降順調に株価が上昇しています。3月下旬以降の信用残高をみると、買い残高は3月21日現在の7,674,000株から5月23日時点では3,824,000株とほぼ半減しています。一方、売り残高は3月21日時点で1,695,000株だったのが5月23日時点では4,931,000株と約3倍に増加しています。この結果、信用売り残高が信用買い残高を上回る「売り長」の状態になりました。3月21日時点で5.17倍だった信用倍率も、5月23日時点では0.78倍まで低下しました。

また、昨年9月からの信用買い残高の推移をみると、買い残高自体がずっと減少傾向にあることが分かります。もともと信用買い残高の減少により需給が改善してきたところに、信用売り残高の増加が生じて信用倍率が1倍を切る「売り長」の状態になったことで、上昇にはずみがついたことが読み取れます。

株価上昇とともに買い残高が減少する一方で売り残高が増加して「売り長」の状態になると、ネットで将来の買い需要が生じることになります。売り方による株価の踏み上げで上昇が加速することが期待できますし、そうでなくとも株価が下がりにくくなるという効果があります。

ただし、直近は信用買い残高が増加傾向にあり、信用倍率も1倍を超えてきています。株価が上昇を続けている分には問題ありませんが、信用買い残高の増加が続いているにもかかわらず株価の上昇が止まってしまった場合は、その後の株価の動きに注意が必要です。

 

信用残高の推移(抜粋)  クラリオン(6796)

日付 売残 買残 信用倍率
2013年9月6日 5,135,000 13,890,000 2.7
2013年12月20日 4,556,000 10,109,000 2.22
2014年3月21日 1,485,000 7,674,000 5.17
2014年5月23日 4,931,000 3,824,000 0.78
2014年6月6日 5,165,000 5,574,000 1.08
2014年6月13日 5,396,000 6,802,000 1.26

信用残高に目を向けると、違った切り口から個別銘柄の株価が下がり続ける、もしくは上がり続ける理由が見えてきて面白いと思いませんか?

これまで信用残高を気にしたことがなかった方も、今後は時々チェックしてみてはいかがでしょうか。

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