下半期レンジの目安は2万4,000~2万1,000円台
では、メインシナリオとなるレンジ相場の範囲はどのくらいかについて見ていきます。
■(図3)日経平均(週足)の線形回帰トレンド(2020年7月16日取引終了時点)
上の図3は週足の日経平均の線形回帰トレンドです。現在はちょうどトレンドの中心線まで株価を戻してきたことがわかります。
実は、この線形回帰トレンドは昨年末のレポート(2019年12月30日)でも紹介していました。今回も分析の起点となるのは2016年6月下旬のダブルボトムをつけたところにしていますが、トレンドの線の傾きは昨年末に比べて緩やかになっています。2~3月にかけての株価急落が影響を与えたわけですが、右肩上がりは維持しているため上昇基調はまだ続いています。
年末まであと24週間となりましたが、現在の相場基調が続くと仮定した場合、7月16日時点で年末の株価水準は中心線で約2万3,500円となります。上方向では+1σ(シグマ)で約2万5,000円、+2σで約2万6,700円、反対に下方向では▲1σで2万1,800円、▲2σで2万223円です。
そのため、メインのレンジとなりそうなのは、+1σから▲1σの範囲内である、2万4,000~2万1,000円台あたりになるかと思われます。
上値が+1σの約2万5,000円ではなく、2万4,000円台と低めにしているのは、最初の局面が示しているように、2万3,000~2万4,000円台のもみ合いが3カ月以上続いていたことによる「抵抗帯」への意識が強いと思われるからです。
また、株価の上振れ要因のカギとしては、抗ウイルスワクチンの開発が有力視されています。最近はワクチン開発の動向が相場の上げ材料となる場面が増えていますし、早い段階で実現の見通しが立てば2万4,000円台以上のさらなる上昇もありそうです。
とはいえ、市場がワクチン開発に対して抱いている期待は、米政権が打ち出している「ワープ・スピード作戦」のスケジュール感に準じていると思われます。具体的には、秋までにワクチンを開発し、来年末までに接種3億回分以上を生産・供給するというものですが、かなり早いスピード感ですので、遅れが生じる可能性は十分にありますし、品質や安全性の問題がクリアできるかも課題として残されています。
となると、相場の視点は次第に「開発されたワクチンが果たして有効なのか、そして多くの人に行き渡るのか」といった実行性を見極める段階へと移行していくことになります。足元の開発競争を背景に関連銘柄が次々と物色されるという状況はそろそろ賞味期限が近いかもしれません。さらに、銘柄が絞られると、コロナによる株安を抑制してきた役割が後退してしまう点にも注意が必要です。
反対に、下方向についてはコロナの感染拡大と実体経済回復の進捗度合いに左右されることになりますが、ある程度は各国の金融緩和が支援材料になりそうです。実際に、日本銀行のETF(上場投資信託)買いは6月末で約4兆7,000億円の規模となっていますが、昨年1年間の金額(4兆3,772億円)を半年で超えています。
2020年末に向けては、まだ不透明な要素が多く、色々な思惑も交錯しやすいため、前半戦に見せたような波乱含みの展開が警戒されますが、ふたを開けてみたら「思ったよりも方向感が出ない」動きを見せるのかもしれません。