あけましておめでとうございます。皆さまは新年をいかがお過ごしでしたでしょうか。筆者は恥ずかしながらインフルエンザにかかってしまい、寝床の上での年越しと相成ってしまいました。昨年は胃腸炎でダウンと、2年連続で散々な年越しでしたが、株式市場が休みの間くらいはゆっくり休みなさいよという体からのメッセージなのかもしれませんね。インフルエンザはまだまだ大流行しておりますので、皆さまも十分お気を付けください。
本年も個人投資家の皆さまにとって役立つ知識や情報を発信してまいりますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。
株式分割をしたのに株価が下落してしまう銘柄が増えている
株式投資についての書籍をみると、入門書だけでなく、ある程度の経験者を対象とした実践書にも、「株式分割は株価にプラスの効果がある」と書かれています。実際、過去の当コラムや拙著でもそのように説明していますし、つい最近出版された本(拙著ではありません)を読んでみてもそう書かれています。つまり、「株式分割=株価上昇」というのは、投資家にとってはもはや「常識」です。
ところが株式分割を実施した銘柄の最近の株価動向をみてみると、必ずしもそうなっていないケースが目立つようになってきました。
そこで今回は、今まで常識として語られてきた「株式分割=株価上昇」という図式がここ最近どのように変化してきているのか、そして最近の傾向を踏まえた対応策について考えてみたいと思います。
なお、今回は株式分割についての基本的な説明は割愛させていただいております。基本的な説明はこちらのコラムをご参照ください。
株式分割の「プラス面」と表裏一体にある「マイナス面」とは
株式分割の最大のプラス効果といえば、1単位当たりの必要投資金額が小さくなることにより、これまでその銘柄に手を出すことができなかった投資家層からの資金が流入することです。その結果新たな買い需要が引き起こされ、株価上昇につながるという図式です。
例えば株価8,000円、1単元100株の銘柄に投資するには最低でも8,000×100=80万円必要です。でも、この銘柄が1株を2株に分割する株式分割を実施すれば、必要な投資資金は4,000×100=40万円で済むことになります。
通常、株式分割についての解説はこのプラス効果を説明しただけで終わっていますが、実はこれと表裏一体のマイナス面についても合わせて考えておかなければなりません。
上の例で、この銘柄を買いたい投資家にとっては、80万円必要だったものが40万円で投資できるわけですが、すでにこの銘柄を保有している投資家はどう考えるでしょうか。
例えば1単位だけ保有している投資家は、売却してしまうと保有株数がゼロになってしまいますから売却になかなか踏ん切りがつかないこともあるでしょう。でも、株式分割によって2単位に増えたら、半分の1単位だけ売却しよう、と考える投資家も少なくないのではないでしょうか。
つまり、株式分割の結果株価が上昇するかどうかは、分割により新たに増加する買い需要と、分割により新たに増加する売り需要のどちらが大きいかによって決まるのです。
分割前の最低投資金額が高い銘柄は分割後の売り需要が高くなる傾向が
また、分割により新たに増加する売り需要は、株式分割前の1単位当たりの必要投資金額が高いほど、そしてより細かく分割されるほど大きくなると想定できます。
実は、株式分割により株価が下落している銘柄の多くは、分割前の最低投資金額が100万円を超えていました。100万円で1単位保有している投資家が、1株を5株にする株式分割により保有株が5単位に増えれば、1~2単位くらいは売ってしまおうと考えるのは想像に難くありません。これに対し、株式分割によってこの銘柄を新たに買いたいという投資家の買い需要の方が小さければ、株価は下がってしまうのです。
例えば、アドテックプラズマテクノロジー(6668)は、昨年10月30日に1株を10株とする株式分割を発表しました。これを好感し、株価は10月30日終値13,020円から11月5日の24,500円まで上昇しました。分割直前の11月25日終値は18,410円でした。
そして分割実施後の11月26日の始値は1,739円、翌27日には2,210円まで上昇しましたが株価の勢いは続かず、昨年末(12月30日)の終値は1,295円まで下がってしまいました。
- アドテックプラズマテクノロジー(6668) 日足チャート
この動きの中で特に重要なのが、株式分割が実施され新株が流通した後の11月26日以降の株価の動きです。「常識」で考えれば、それまで最低投資金額が200万円近くだったものが、20万円足らずで投資できるようになるわけですから、かなりの買い需要が生じ、株価が大きく上昇しても不思議ではありません。ところが現実の株価の動きからは、そうした新規の買い需要を大きく上回る既存の株主からの売り需要が続いていることを読み取ることができます。