景気回復の特効薬はやはりワクチン開発

 (1)と(2)が解消されるためには、やはり新型コロナウイルスのワクチン開発が必要です。WHO(世界保健機関)は「世界中で200を超える研究が進み、このうち15は臨床試験が始まっている」と開発が進んでいることを説明しますが、時期については「12カ月後、遅くとも18カ月後の開発を目指している」としており、実際にワクチンが使えるのはまだ先の話のようです。

 ワクチン開発が2021年の夏から年末頃までかかるとなると、それまでは中央銀行が支えてくれるという楽観と、実体経済の回復鈍化による景気後退懸念が交錯する相場が続きそうです。回復期待と実体経済との乖離を気付かせてくれるのが感染者数の増加と考えれば、これが減少傾向にならない限り、景気後退懸念の方が勝っていくということになりそうです。

 ところが、感染拡大の懸念材料は欧米で増えています。テキサスやフロリダなど一部の州では、経済活動に再び規制をかけてきましたが、規制を無視するかのように、夏場に向けて人々の活動が活発化することが予想されます。米大統領選挙も夏場に向けてヒートアップし、人々が集まる機会が増えそうです。

 また、米国ではマスク着用が人権侵害だとの議論が出ているのは驚くばかりです。そして欧州では、EU(欧州連合)域内の移動緩和だけでなく、域外の移動緩和も認め始めており、その影響が懸念されます。

 世界の新型コロナウイルス感染者数は1,000万人を超えてきました。米国とブラジルだけで世界全体の感染者数の約4割を占めていますが、南北米エリアではこの2国だけでなく他の中米の国の感染者も増えてきています。これからも中南米、アフリカ、南アジアと拡大していくことが予想され、楽観論を冷やす材料は減ることはなさそうです。

 IMFの警鐘は、まだ先の話ではなく、複合的に断片的に起こる可能性もあるという見方でマーケットに臨む方がよさそうです。