5月の小売売上高は2.8%減、今後は北京の集団感染が外食・娯楽に影響か

 中国の5月の小売売上高は前年同月比2.8%減と、市場コンセンサス予想の同2.3%減から下振れた一方、前月の7.5%減から改善傾向を示した。内訳は商品小売りが0.8%減、外食が18.9%減。経済活動が正常化しつつある中、いずれも4月(4.6%減、31.1%減)比で下げ幅が縮小した。ただ、ここに来て北京で新型コロナウイルスの集団感染が報告され、マーケットでは全国的な“第2波”への警戒感が浮上している。BOCIは当局が北京市から他省市へのヒトの移動を再び制限するとみて、主に外食やカジノ、娯楽銘柄への影響を見込む。その半面、日用品・食品銘柄に対しては楽観見通しを維持し、青島ビール(00168)、華潤ビール(00291)と、各種レストランチェーンを展開するヤム・チャイナ(米NY上場:YUMC)を消費セクターのトップピックとした。

    国家統計局が発表した5月の物価統計に目を向けると、消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比2.4%と、市場予想の2.7%を下回り、3月の4.3%、4月の3.3%から減速した。前年同月の商品価格の高さが一因。また、19年半ばからの価格急騰で、インフレの“元凶”となってきた豚肉の供給状況が改善し、旧正月をピークに価格が落ち着き始めたこともCPI上昇率の縮小に寄与した。BOCIは豚肉価格が横ばいに推移するとみて、続く6月のCPI上昇率についても5月並みを見込んでいる。ただ、長期視点では、食品価格の高騰がCPIを押し上げてきた局面は終わり、今後は逆に押し下げ要因になるとの見方。20年下期の豚肉価格の下落を受け、年末にはCPI上昇率がほぼゼロとなる可能性を指摘している。

    小売売上高は5月に前年同月比2.8%減。1-5月では前年同期比13.5%の落ち込みとなり、商品小売りと外食が各10.6%減、36.5%減だった。外食需要が戻り始めたことで、5月には生活必需品の売り上げ増ペースがやや減速したが、それでも食品と飲料が11.4%増、16.7%増(4月は18.2%増、12.9%増)。ほかに日用品、化粧品が12.9%増、17.3%増と大きく持ち直し、非必需品カテゴリーも1-4月の減額から回復傾向に転じた。

    外食売り上げは5月に前年同月比18.9%減少したものの、3月の46.8%減、4月の31.1%減から持ち直した。ただ、再び新型コロナの感染が拡大すれば、外食店の経営に打撃となる可能性が高い。

    新たな集団感染は北京市最大の生鮮食品市場「新発地」で発生しており、BOCIは移動制限などの感染防止措置が再び導入されるとの見方。主に外食店、映画館、カジノ、ナイトクラブに打撃が及ぶとみる。個別では青島ビール、華潤ビール、ヤム・チャイナを消費セクターのトップピックとし、うちビール2社に関しては家飲み需要の堅調と業務用市場への依存度の低さを楽観見通しの理由としている。