2.巣ごもり消費で前4Qの旧作販売が急増
新型コロナウイルス禍の中で巣ごもり消費(らしき消費)も伸びたもようです。前4Qの旧作販売本数は601万本と2019年3月期4Qの170万本から大きく伸びました。ちなみに、2020年3月期通期の旧作販売本数は、前年比28.2%増の1,820万本でしたが、前1-3Q累計では同2.5%減でした。「モンハンワールド」や「ストリートファイター」シリーズなどのカプコンの有名タイトルを、価格が安いこともあって、他社ソフトで遊んでいたプレイヤーが購入するケースが多いようです。
2020年3月期のゲームソフト総販売本数は、2,550万本(同0.8%増)と横ばいでしたが、このうち採算のよいダウンロード販売が2,055万本(前年比34.3%増)と増えたこと(ダウンロード比率は2019年3月期60.5%から2020年3月期80.6%へ上昇)、特に、開発費の償却が終わった旧作のダウンロード販売が増えたことが業績に寄与しました。
また、アミューズメント機器事業で、パチスロ機「新鬼武者」2万台を出荷しました。このため、2019年3月期に赤字だったアミューズメント機器事業は黒字転換しました。
この結果、2020年3月期通期は、売上高815億9,100万円(前年比18.4%減)、営業利益228億2,700万円(同25.8%増)となりました。「アイスボーン」の価格が安いため減収となりましたが、カプコンとしては高い増益率が実現しました。
3.2021年3月期会社予想は12%営業増益。今4Qに「バイオハザード8」発売か。
今期2021年3月期の会社予想業績は、売上高850億円(前年比4.2%増)、営業利益255億円(同11.7%増)です。今期発売の大型新作は、2020年4月発売の「バイオハザード RE:3」のみ発表されています(5月時点で250万本販売、PS4、Xbox One、PC向け)。「バイオハザード3」(1,999年9月発売、PS用、累計350万本)のフルリメイク版です。
また、2020年6月11日付けで(カプコンUSAによる。日本では6月12日付け)、「Resident Evil Village」(日本名は「バイオハザード ヴィレッジ」で、これが「バイオハザード8」になる)の2021年発売が公表されました。2020年年末(ホリデーシーズン)に発売が予定されているプレイステーション5(PS5)、Xbox Series X、PCに対応します。PS4に対応する可能性もあると思われます。実際の発売時期は、2021年3月期4Qから2022年3月期1Qにかけて(2021年1~6月)と思われ、今回の楽天証券業績予想では2021年3月期4Qと想定しました。前作「バイオハザード7 レジデント イービル」(2017年1月発売)は累計販売本数750万本、その前の「6」(2,012年10月)は同750万本だったため、「8」もこれと同等かそれ以上が期待できます。
また、日米欧で少なくとも2020年内は巣ごもり消費が続く可能性があります。そのため、採算の良い旧作のダウンロード販売が今期も伸びると予想されます。一方で、新型コロナウイルスがゲームソフトの開発スケジュールや、アミューズメント施設の業績に悪影響を与えていますが、日本での緊急事態宣言の解除に伴って緩やかに悪影響から脱すると思われます。
このため、楽天証券では2021年3月期を、売上高870億円(同6.6%増)、営業利益265億円(同16.1%増)と予想します。会社予想に対して若干の上乗せがあると思われます。
2022年3月期については、「バイオハザード8」が継続的に売れると思われます。また、PS5用ソフトとしては、新シリーズ「PRAGMATA」(プラグマタ)の2022年発売も公表されました。2022年3月期または2023年3月期の発売が予想されます。
加えて、2022年3月期に「モンスターハンター:ワールド」の次回作または有料追加コンテンツが発売される可能性があります。そのため楽天証券では、2022年3月期を売上高930億円(同6.9%増)、営業利益300億円(同13.2%増)と予想します。
4.目標株価を4,400円から4,900円に引き上げる
今後6~12カ月間の目標株価を前回の4,400円から4,900円に引き上げます。楽天証券の2022年3月期EPS予想198.6円に想定PER25倍を当てはめました。営業増益率10~20%の持続的利益成長が実現していることを評価しました。中長期で投資妙味を感じます。
SCREENホールディングス
1.2020年3月期4Qは、13%減収、52%営業減益
SCREENホールディングスの2020年3月期4Q(前4Q)は、売上高971億9,800万円(前年比13.1%減)、営業利益51億6,400万円(同52.0%減)となりました。前4Qは前3Qからは回復しましたが、前年同期では大幅減収減益となりました。
セグメント別に見ると、主力事業であるSPE(半導体製造装置)事業は、前4Qは前3Qよりは改善したものの、前年比では大幅減収減益となりました。2019年3月期までにあった部品の調達単価が高いことによる原価率悪化は解決されたもようですが、2020年3月期は別の問題が発生しました。複数の大手顧客に評価機として出荷したウェハ洗浄装置が手直しを要求された結果、採算が悪化し、これがSPEの業績悪化要因となりました。
また、GA(グラフィックアーツ機器(印刷用機器))事業、FT(ディスプレイ製造装置および成膜装置)事業、PE(プリント基板関連機器)事業のいずれもが低水準な業績でした。
この結果、2020年3月期通期は、売上高3,232億4,900万円(同11.3%減)、営業利益125億6,100万円(同57.6%減)となりました。なお、固定資産の減損(GA、PEの固定資産)16億円、政策保有株の評価損18億円を特別損失として計上しました。そのため、前期の当期純利益(親会社株主に帰属する当期純利益)は50億1,000万円(同72.3%減)となりました。
表4 SCREENホールディングスの業績
表5 SCREENホールディングス:セグメント別損益動向(四半期ベース)
表6 SCREENホールディングス:セグメント別損益動向(通期ベース)