解散総選挙を控え、日本では小池東京都知事が率いる新たな政治勢力が台頭してきている。小池氏が立ち上げた「希望の党」は野党民進党と選挙協定を結び、来る10月22日の衆議院選挙で定数465議席中120~180議席を獲得する勢いである。「アベノミクス」が当初に掲げた成長戦略を「コイケノミクス」が推進するとみられる点に注目が集まっているが、これは小池都知事が長年にわたり企業優先、規制緩和促進、成長重視を一貫して主張しているからである。
具体的に言うと、コイケノミクスは以下のようなサプライサイドの歓迎すべき経済政策を打ち出している。
•法人税と所得税両方の削減を提唱(これを掲げているのは希望の党のみ)
•「経済特区」と「レギュラトリー・サンドボックス」の設定推進(官僚のみならず起業家も参加して規制を策定)
•国有資産の民営化促進
•公共サービスの質と効率性の向上、ならびに地方の自治権拡充に向けた行政改革に着手
•多様性に富む「スマート」社会の実現に注力。具体的には、IT インフラの重視、ビッグデータ、フィンテック、ブロックチェーン、バイオテックなどの活用、雇用形態の多様化推進など
小池新党の経済政策の具体的な内容が発表されるのはまだ先のことだが、骨子は小池氏の師と見なされている小泉元首相、また民間から招聘した助言グループ(メンバーの多くは成功を収めた新世代の企業家)が推進する規制緩和と企業優遇方針に沿ったものになるとみられる。小泉元首相と同じく、小池氏の経済理念は民間セクターの活性化、公正で透明性の高い競争と説明責任の強化である。
世界のリーダーと比較すると、政治的な力を強めている小池氏のこの勢いは、フランスのマクロン大統領が登場した時に最も近いと考えられる。マクロン大統領と同様、小池氏は影響力に物を言わせる旧体制を打ち破り、信頼に足る建設的な新体制を創造するために必要なビジョン、専門知識、そしてカリスマ性を備えている。小池氏は既存体制に挑み、進取の気性と目標意識を武器に自ら道を切り開いてきた政治家である。
無論、希望の党が総選挙後の国会運営にどの程度の影響を及ぼすかは未知数である。都知事選とは異なり、国政選挙は選挙区ごとの激しい票の取り合いとなる。衆議院の定数465議席の内訳について信頼のおける予測をするのは時期尚早であろう。
とはいえ、民進党との連携により希望の党が120~180議席獲得する可能性が出てきた。一方、自民党は現在の288から240~250に議席を減らす見通しである。当社の予想に反し、離党して希望の党に合流する自民党議員が増えれば、自民党が過半数割れを喫するリスクは高まるだろう。
現段階での選挙結果の予測は信頼性を欠くものの、経済政策の面から見て、希望の党はアベノミクスが最初に公約として打ち出した構造改革・成長戦略を踏襲する可能性が高いとみている。少なくとも、コイケノミクスはアベノミクスを再び勢いづかせ、日本経済のサプライサイドに再び主眼を置かせる力を秘めている。
市場への影響
市場の関心の的は、希望の党が掲げる法人税減税と「経済特区」の推進であろう。当社が予想するように、向こう数週間のうちにこの2つの政策が選挙公約として発表されれば、日本の将来戦略を後押しするカタリストとしてコイケノミクスが掲げる理想は信頼を得ることができよう。
2017年9月27日 記