2.2020年3月期4Qのセグメント別動向と2021年3月期見通し

1)ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)

 2020年3月期4Q(以下、前4Q)は、売上高4,336億円(前年比12.9%減)、営業利益462億円(同27.7%減)となりました。

 前4Qは特に目立った新作ソフトがなく、2020年末のプレイステーション5(PS5)発売予定を受けてこのセグメントは既に端境期に入っているため、減収減益となりました。また、2019年3月期4Qに一時的利益約80億円が計上されていたことも影響しました。

 会社側の試算では、新型コロナウイルス感染症の営業利益への影響は、ゲームソフトのダウンロード販売の増加、ネットワークサービスの増収で28億円になります。ある程度「巣ごもり」消費のプラスの影響が出ていると思われます。ちなみに、前4QのPS4用ソフトのダウンロード販売本数は、前年比60%増となりました。前3Qは同23%増だったため、これを見てもある程度は巣ごもり消費が発生していると思われます。この巣ごもり消費は今1Q(2020年4-6月期)にも現れると思われますが、ソニーのゲームは中級者以上に向いたゲームや暴力性の強いゲームが多く、(ゲーム初心者に強い)任天堂ほど大きな巣ごもり需要を獲得できない可能性もあります。

 2021年3月期は、前述のように2020年年末(ホリデーシーズン、2020年11月26日の感謝祭からクリスマスイブまで)にPS5を発売する予定です。このため、今期は端境期によりPS4ハード、ソフトの減収が続くため、G&NSは減収減益となると予想されます。一方で、PS4用の大型新作ソフト(ソニー製)もあります。6月19日に「ラスト オブ アス パートⅡ」、7月17日に「ゴースト オブ ツシマ」を発売します。この2作によって、今1Q、2Qにおける端境期の業績悪化がある程度は緩和されると思われます。

 なお、「ラスト オブ アス パートⅡ」は感染症をテーマにした暴力性の強そうなゲームです。時節柄このゲームが日米欧の各国でゲームユーザーに受け入れられるか注目しています。

 ゲームソフトの開発体制については、新型コロナウイルス感染症の悪影響は今のところ出ていないもようです。

 楽天証券では、各セグメントの2021年3月期、2022年3月期営業利益予想を表3のごとく予想しています。G&NS営業利益は2021年3月期1,700億円(同28.7%減)、2022年3月期1,700億円(同0.0%増)と予想します。2021年3月期、2022年3月期は、PS5のハード、ソフトが伸びる一方で、PS4のハード、ソフトが減少するために業績横ばいが続き、再成長は2023年3月期からと予想します。

 ただしこれは、PS5がゲームユーザーから受け入れられてヒットするという前提の下でです。PS5のスペックはかなり開示されてきましたが、価格が公表されていません。価格が重要なポイントになると思われます。

 また、PS5では映像面の技術進歩が大きく進展すると思われますが、今後の家庭用ゲーム市場で重要になる、クラウド、5Gをどう取り込むかという課題については、クラウドは技術が十分こなれておらず、5Gは低コストのフルスペック(送受信の高速化、低遅延、同時多接続)5Gチップセットがまだ出ていないことから、未知の部分が多くなっています。

 PS4が成功したゲーム機だったため、逆にPS5が成功するとは(PS4以上に売れるとは)限りません。PS5が売れるかどうか、発売後の動きを見る必要があります。

グラフ1 ソニー・ゲーム&ネットワークサービス事業の売上構成

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ2 ソニーのゲームサイクル:プレイステーションの販売台数

単位:万台
出所:会社資料より楽天証券作成、予想は楽天証券

グラフ3 ソニーのPS4用ゲームソフト販売本数

単位:万本
出所:会社資料より楽天証券作成、予想は楽天証券
注:追加ダウンロードソフトを除く

2)音楽

 音楽の前4Qは、売上高2,114億円(前年比0.7%減)、営業利益303億円(同39.0%増)となりました。会社側の試算では新型コロナウイルスの悪影響が営業利益に対して約10億円あったことになっていますが、乃木坂46やKing Gnuのヒットによって音楽CDが前年比9.6%増と堅調に売れ、海外中心にストリーミングが同25.9%増と好調でした。スマホゲーム「Fate/Grand Order」の減収はありましたが、前年比営業増益となりました。

 ただし、日本でも世界でも、2月下旬から音楽ライブが中止となり、音楽制作、映像制作が遅れているため、今1Qにマイナスの影響が強く出る可能性があります。そのため、2021年3月期は減益となり、回復は来期または来年に入ってからと思われます。

 なお、2020年3月期通期は見掛け上大幅減益となっていますが、これは2019年3月期営業利益に買収したEMIの再評価益1,169億円が含まれていたためです。これを除けば営業増益でした。

グラフ4 ソニー・音楽事業の売上構成

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成