バランスなのになぜ?「8資産均等」で分散効果が働かなかった理由

「8資産均等」型のバランスファンドとは、国内株式、先進国株式、新興国株式、国内債券、先進国債券、新興国債券、国内リート、先進国リートという計8種類の資産を、12.5%ずつ組み入れたファンドのことです。インデックスファンドをバランス良く8本束ねていると考えると分かりやすいでしょう。信託報酬が安く、つみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)適格となっている商品も多いため、近年特に人気を集めるようになりました。

 しかし、残念ながらコロナ禍の相場では、株式インデックスファンド並みの大幅な基準価額の下落に見舞われることとなってしまいました。

 その理由は、株式も債券も軒並み下落してしまい、分散効果が十分に働かなかったからです。

 理論上、株式と債券は逆の値動きをするといわれています。株式市場が急落し、組み入れている株式の価値が下落しても、債券がクッション効果を発揮することで、保有資産全体としては大きな傷を負うことを防げる…というのが一般的に知られているバランス型の特徴です。

 しかし、今回のコロナ相場では、株式も債券も同じ方向に動き、短期間で下落してしまいました。

 さらに追い打ちをかけたのが、REIT(リート:不動産投資信託)と新興国株式です。REITも新興国株式も、先進国の株式や債券と比べて流動性が低く(取引量が少なく)、下落するときは文字通り「急落」してしまうのです。今回、REITに至っては、リーマン・ショックの時以上の下落に見舞われることとなりました。

 このように、多くの資産に分散しているからといって、投資信託そのもののリスク(基準価額のブレ=標準偏差)が一律に低くなるというわけではないのです。

 もし、つみたてNISAのように、積み立てで20年単位の時間をかけ、コツコツと資産を作っていきたい、あるいは、それだけの時間をかけられるなら、低コストの「8資産均等」型は決して悪い選択肢ではありません。積み立てを継続すれば、時間分散効果のメリットを享受できるからです。リーマン・ショックや、今回のコロナ・ショックのような特異な状況下では、短期的な基準価額の変動を覚悟しなければなりませんが、時間をかけることで相応の高いリターンも期待できます。

 反対に、20年も時間をかけられない、あるいは、冒頭で述べたように、コロナ禍の大きな相場変動で肝を冷やしたという人は、資産配分を機動的に変動させる、リスクコントロール機能付きのバランスファンドも選択肢に入れると良いでしょう。

 リスクコントロール機能付きのバランスファンドとは、市場環境に応じて、柔軟に資産配分を調整するタイプのファンドのことです。詳しく説明していきます。