積立投資+スポット投資で資産形成の効率が高まる

 既につみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)やiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)で投資信託の積み立てを行っていて、さらに運用に回せるお金に少し余裕が出てきたという方なら、一つのファンド(投資信託)を10万円や100万円というまとまった資金で一括買い付けするスポット投資も併用することで、資産形成の効率を高めることができます。

 また、10万円という金額にこだわらず、スポット購入を検討した方がよいケースもあります。

 積立投資は、購入タイミング(=時間)を複数回に分けて分散することで、購入価格を平均化する効果が期待できます。しかし、例えば数百万円、数千万円の単位の投資資金があった場合、これを1万円などの細かい単位で積み立てるというのは賢明ではありません。なぜなら、毎月の積み立て額よりも圧倒的に多い金額が、投資機会を奪われた状態になるからです。

 こうした、まとまった資金の運用でオススメしたいのは、「投資可能資金の6〜7割をスポット購入に充てて、残りの3〜4割を、もっと下がったときに追加購入できるよう取っておく」という方法です。数回に分けてスポット購入することで、時間分散効果に期待しながらも、機会損失が大きくなりすぎないようにします。

 心理的に、購入のタイミングを自分で判断することにどうしても不安を覚えるという場合は、積み立てを取り入れてもよいでしょう。ただし、積み立て額を少額にしすぎないように注意してください。運用に充てられる時間を長く取れた方が、収益を獲得できる可能性が高まるためです。

 いずれにせよ、スポット購入は、積み立てと比べると投資タイミングの影響が出やすいため、特に金額が大きい場合は、「購入のタイミングをあまり気にしなくてもよいファンド」を選ぶことをお勧めします。代表格は、ファンド自体にリスク調整機能が備わっているバランス型です。

 ファンドによっては、想定リスク別に複数本のシリーズで展開されているので、投資額の大きさと運用に充てられる時間のバランスを考えながらファンドを選びましょう。

 あるいは、金額がさほど大きくなく、スポット購入によって保有資産全体の運用効率を高めたいという場合は、インデックスファンドよりも高いリターンを期待できる、特徴のあるアクティブファンドを選択してもよいでしょう。投資初心者の方でも、組み合わせ方次第で収益源に厚みを持たせることができます。

 それでは、実際に10本の投資信託を見ていきましょう。

10万円のスポット投資を検討したい投資信託10選

オススメ 投資対象 ファンド名
1 日本を除く海外株式 ラッセル・インベストメント外国株式ファンド
2 米国株式 米国製造業株式ファンド
3 海外株式 iTrustインド株式
4 国内株式 One国内株オープン
5 国内株式 大和住銀DC国内株式ファンド
6 国内株式 ミュータント
7 バランス DCニッセイワールドセレクトファンド(標準型)
8 バランス インデックス・ブレンド(タイプIII)
9 バランス たわらノーロード 最適化バランス(安定成長型)
10 バランス ピクテ・ゴールデン・リスクプレミアム・ファンド

1:ラッセル・インベストメント外国株式ファンド

投資対象:日本を除く海外株式

 個別企業を選別するのではなく、さまざまな強みを持った世界の運用会社を厳選し、運用会社ごとバランスよく組み合わせるという、ユニークな運用方針のファンドです。市場の状況などを考慮しながら4〜7社程度の運用会社を採用し、ベンチマークのMSCIコクサイ指数を上回るリターンを目指します。

2:米国製造業株式ファンド

投資対象:米国株式

 ファンド名にある通り、米国株式の中でも製造業に限定し投資を行うアクティブファンドです。具体的には、一般消費財・サービス、生活必需品、ヘルスケア、資本財・サービス、情報技術、素材の6セクターを投資対象とし、企業分析や財務分析によって組入れ銘柄数を40程度まで厳選しています。

 米国株は、インデックス(市場平均)を恒常的に上回ることが難しい市場のため、S&P500種指数などのインデックスファンドに追加するなら、特徴のあるファンドを選ぶことをお勧めします。

3:iTrustインド株式

投資対象:海外株式

 インドは、新興国の中でも安定した人口増加と経済成長を続けており、株式市場も順調に上昇していますが、代表的な新興国株式インデックスに占める割合は、12~15%程度にすぎません。着実にインド株式市場の恩恵を享受したいのであれば、ピンポイントでインド株ファンドを取り入れることをお勧めします。

 当ファンドは、インド株ファンドで唯一の「つみたてNISA」対象で、信託報酬も相対的に低く抑えられているため、スポット購入はもちろん、米国株との分散効果に期待し、コツコツと積み立てるのも良いでしょう。

4:One国内株オープン

投資対象:国内株式

 市場環境に応じて、時価総額の大きい大型株だけでなく、成長途中の小型成長株なども柔軟に組み入れて運用を行う、国内株式のアクティブファンドです。株式市場全体が右肩上がりの好況期は景気に敏感な大型株中心で運用し、反対に株式市場の調整局面では、底堅さを発揮する小型成長株の組み入れ比率を高めるなど、柔軟な調整を行う点に特徴があります。

5:大和住銀DC国内株式ファンド

投資対象:国内株式

 国内株式の中でも、割安に放置されている株(バリュー株)に着目しながら、収益性や成長性も考慮に入れ、銘柄を選定するアクティブ型の投資信託です。

 一般的に、バリュー株は景気拡大局面に華々しい上昇を期待しにくい半面、景気後退局面や、株式市場全体が不安定なときには底堅さを発揮するため、少しでも保有しておくと、運用資産全体の「緩衝材」としての機能が期待できます。

6:ミュータント

投資対象:国内株式

 将来、爆発的な変貌を遂げる可能性のある企業=「ミュータント・カンパニー」を厳選し、投資します。海外により有望な企業があると判断された場合は、純資産総額の30%を上限として海外株式にも投資を行いますが、足元では、株式時価総額が2,000億円未満の国内中小型株が中心となっています。

7:DCニッセイワールドセレクトファンド(標準型)

投資対象:バランス

 国内外の株式と債券に分散投資する、シンプルなバランス型ファンドです。組入れ資産の割合に応じて、「債券重視型」、「標準型」、「株式重視型」の計3本のシリーズで展開されています。「標準型」の当ファンドの基準ポートフォリオは、先進国の債券と株式が約5割ずつです。

 この構成比率は、短期間での見直しは原則として行わず、それぞれ±5%未満に変動幅を抑制します。

8:インデックス・ブレンド(タイプIII)

投資対象:バランス

 国内外の株式と債券に加え、リートに分散投資するバランス型ファンドです。当ファンドは、相対的に大きな値動きが想定されるリスク性資産の投資比率が低い順に、「タイプI」から「タイプV」まで、計5本のシリーズで展開されています。

 リスク性資産の中には、新興国の株式・債券のほか、米国の連続増配株や低格付け債券(ハイ・イールド債券)など、多様な資産が含まれる点に特徴があります。

9:たわらノーロード 最適化バランス(安定成長型)

投資対象:バランス

 国内外の株式、債券に加え、リートに分散投資するバランス型ファンドです。当ファンドは、目標とするリスク水準別に、計5本のシリーズで展開されています。この目標リスク水準に応じて、組入れ資産ごとの投資比率を調整する点に特徴があります。

 目標リスク水準が高いほど、より高いリターンが期待できる株式とリートの組入れ比率が高くなっています。「安定成長型」の目標リスク水準は約7%で、5本中3番目に高い水準です。

10:ピクテ・ゴールデン・リスクプレミアム・ファンド

投資対象:バランス

 日本を含む世界の株式と債券のほか、金(ゴールド)も投資対象とするバランス型ファンドです。各資産の配分比率は、世界の市場環境に応じて決定します。具体的には、取ったリスクに見合う、魅力的なリターンが期待できる資産を都度選定し、配分を調整します。

 例えば、低金利環境下で、利息を生まない資産である金の魅力が相対的に高い時は金の組入れ比率を高くし、一方で金利上昇時は、金の比率を下げ、債券の比率を高めるといった対応を行います。この結果、低金利局面と高金利局面の双方でリターンの獲得が期待できます。

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