「postコロナ」へ変化を加速する世界
「postコロナ」へ世界は変化を速めるでしょう。コロナ・ショックがもたらす新たな変化もあれば、元々想定された変化がコロナ後への適応で加速するもあります。当座は何としてもこのショックを生き抜くことが最大の眼目ですが、同時に投資家として、想定される世界の変化へしっかり適応し進化していく一歩を踏み出してほしいと考えます。一冊の本にしても収まらない大問題ですが、ここではいま頭にある論点を列挙します。ぜひ皆さんと一緒に考えてまいりたいと思います。
(1) 身近なところでの仕事、教育、文化、社会・制度のあり方
(2) 債務、増税、企業・経済の再編、デフレかインフレか
(3) 貧富格差拡大、民主主義の軋(きし)み、中央集権的アプローチの導入
(4) プラットフォーマーの優位、デジタル格差
(5) グローバリズムの見直し、協調と対立の新国際関係
(6) 米国:自国主義、米中対立
欧州:統合のデメリット
中国:監視社会、独自技術、新たな国際地歩、一方で体制の軋み
日本:問われる持続可能性
新興国・資源国:危機から将来性への道のり
地道なバリュー狙いで時機に備える投資
中長期の資産形成にとって、コロナ・ショックのような相場の急落は人生に数回の買いの好機です。世界がこのままダメになると思わない限り、妥当なスタンスと言えます。ただし今回は、「withコロナ」の期間が長引く中、V字型ではなく、U字型回復で底の深さと長さが不透明という悩ましさがつきまといます。このため、自律的な景気サイクルの変化のシグナルを読み解く「時機」を捉える投資の前に、時間分散でバリュー(割安)を狙う投資を地道に積み上げるアプローチを推奨しています。足元の相場の堅調がこのまま進んでも良しですが、まだまだ紆余曲折があって何度も買い場を提供してくれるのも良しです。
景気回復軌道を予想しがたい期間が長引く場合、プラットフォーマー、IT・AI(人工知能)、医療などコロナ禍中もコロナ後も成長が期待されるグロース(成長)株狙いも、今最も割安と見込まれる循環株の物色も、それぞれに妥当性があります。こうした投資の視座を定めることは、やがて苦境を脱する道のりからの「時機」狙い投資、例えば筆者が想定する「米株式→新興国→日本株」の序列を捉える備えにもなるでしょう。
【お知らせ】田中泰輔リサーチのウェブサイトを開設しました。