「人の行く裏に道あり花の山」が逆張りの神髄

 相場格言のなかで、逆張り的な投資姿勢の大切さを説く言葉のひとつが「人の行く裏に道あり花の山」です。現代訳すれば「きれいな花を求めて山に行くのなら、誰も行かない裏道を行ったほうがよい」といった意味です。

 この格言の本質は、「投資の世界では他人と同じ売買を行っている限り、利益は得にくい。むしろ、他人と逆の行動をとることが大事」という教訓です。逆張り的な発想を説く同様の格言には「麦わら帽子は冬に買え」(季節外れには安く買える)、 「幽霊と相場は寂しいほうに出る」(人気がない銘柄や市場にチャンスがある)もあります。

 そこで、図表3で「日米市場の主な上場航空株」を一覧にしてみました。東証上場のANAもJALもPBR(株価純資産倍率)が1倍を大きく割り込んでおり、「株価が企業の解散価値を下回るまで不人気となっている」状況がわかります。

図表3:日米市場の主な上場航空株(参考情報)

コード
(シンボル) 
銘柄名 時価総額
(注1)
株価
(注2)
年初来
騰落率(%)
PBR
(倍)
9202 ANAホールディングス 801,895 2,301.00 -36.8 0.73
9201 日本航空 654,058 1,940.00 -42.9 0.56
LUV サウスウエスト航空 15,760 30.97 -42.6 1.74
DAL デルタ航空 17,425 27.32 -53.3 1.22
UAL ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングス 9,065 31.21 -64.6 0.68
AAL アメリカン航空グループ 5,341 12.63 -56.0 -45.83
ALK アラスカ・エアー・グループ 4,168 34.00 -49.8 0.97
(注1)日本株の時価総額(単位)は百万円、米国株の時価総額(単位)は百万ドル
(注2)日本株の株価は円、米国株の株価はドル
(注3)PBR=株価純資産倍率(倍)
(注4)上記は参考情報であり、特定の銘柄を推奨するものではありません。
(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(日本は4月30日、米国は4月29日)

 米国市場に上場されている航空株のなかにはPBRがマイナスの銘柄もあります。これは、BPS(1株当たり純資産)がマイナス(債務超過)に陥っていることを示します。銘柄によっては、業績のさらなる悪化や経営破綻を織り込む株価の一段安、最悪のケースは「上場廃止」のリスクと直面する可能性がありますので注意が必要です。

 良くも悪くも、ここからは先行きの経営環境変化を巡る連想と期待です。上述のとおり、欧米では新型コロナウイルス感染拡大のペースが鈍化の兆しをみせ、国や州(米国)によってはロックダウンの解除・緩和に向かっています。5~6月は、感染動向や医療現場とのバランスをにらみながら「経済活動を徐々に再開させる政治決断の季節」となりそうです。