債券王ジェフリー・ガンドラックとスコット・マイナードの相場観
1,480億ドルを運用する債券王ジェフリー・ガンドラックは、「間違いなく混乱から抜け出ていない。私は安値を再度うかがう可能性が高いと思う」「人々は少なくともこれから起きる社会的な不安の大きさを理解していない…2,600万人以上の人々が職を失ったのだ」「2009年のどん底から作り上げたすべての雇用は失われたのだ」「実際、自分はちょうど2,863でS&Pの売りにかけた。このレベルでは上値のぶれも下値のぶれも非常に少ないと思う。自分は3,000に行くとは思わない。安値、さらなる下落の可能性があると思う。2月ほどの極端な空売りのポジションは取ってはいない」と、CNBCの「ハーフタイムレポート」で発言した。
債券市場の運用者は現在の相場に対して楽観的には見ていない。ガンドラックと同じ債券運用者である投資運用会社グッゲンハイム・パートナーズのスコット・マイナードは、「第3四半期に景気がV字回復を遂げ、GDPがパンデミック(世界的な大流行)前の水準に回復すると考えるのは非現実的だ」、「打撃を受けた企業や個人を支援するために政府はできる限りを尽くしているが、それでも支援策は不十分かつ的外れであり、多くの意図せぬ結果をもたらすだろう」と述べている。
新興国危機を市場は織り込んでいない
グッゲンハイム・パートナーズのスコット・マイナードは、「グローバル資本市場は、エマージング諸国企業のデフォルト上昇可能性が高まり始めていることを織り込んでいない」と、新興国危機に警鐘を鳴らしている。
世界的なパンデミックはまもなくエマージング市場を直撃するだろう。その次に来るのはモノと食糧の不足、そして社会不安である。既にエマージング市場は、コモディティ価格の下落や中国および先進国の一部における封鎖の経済的影響を受けている。
前例のない速さでエマージング市場から資本が流出しているにも関わらず、これらは現在市場で正確に織り込まれていない。株、債券、通貨、ローン、貿易信用などあらゆる形のホットマネーが流出し、外貨準備が減少している一方で、エマージング諸国の政府は、通貨ペッグの維持やボラティリティ抑制を目的としたり、外貨建債務の自国通貨換算額の急増を抑えたり、通貨価値下落によるさらなる資本流出を抑えるために、市場介入を行っているからである。
エマージング諸国の政府および企業が負う債務総額の国内総生産(GDP)に対する比率はこれまでよりも大幅に上昇しており、現状では180%とアジア債務危機の際の110%を上回っている。最近数カ月間では、ブラジル、南アフリカ、アルゼンチン、ウクライナ、ナイジェリア、インドネシアなど多くのエマージング諸国において、市場からのプレッシャーが通貨の下落、クレジットデフォルトスワップ(CDS)や債券のクレジットスプレッドの拡大といった形で顕在化している。
出所:スコット・マイナード『迫りつつあるエマージング市場の危機』
コロナ禍の未曽有の不景気の中で、コロナ騒動がなくても脆弱だったトルコや南アフリカの金融システムが危うい状況を迎えている。スワップ金利も正常なレートが提示されない事態も予想される。FRBのQEインフィニティでドル不足は多少緩和されたが、ドル不足は依然解消されていない。このような状況の中での新興国通貨への投資は、リスクリターン比が合わない投資となっている。市場は常に弱いところを突いてくる。新興国通貨の変動には注意が必要だ。
トルコリラ/円(日足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル
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