日本のバフェット指数
「誰もが凍った。そして、電話は鳴っていない(まだ依頼は来ていない)。航空会社を考えてみろ。彼らは一体何が起きているかわかっていない。彼らは今までこんなことを見たことがない。彼らのプレイブックにはこんなことが起こるということは書かれていなかった。」(チャーリー・マンガー)
新型コロナウイルスの感染拡大によって多くの企業がショックに見舞われ、誰もが次に何が起きるのかわからなくなっているが、バークシャーにはそうした企業幹部から資本を注入してくれという依頼はまだないと話した。また、バフェットは10年以上前の金融危機の中でゴールドマン・サックスやバンク・オブ・アメリカのような金融機関にそのような投資をしたが、バフェットのパートナーであるチャーリー・マンガーは「今回は慎重だ」と述べた。
米国株のバフェット指標(株の時価総額÷GDP[国内総生産]) 4月30日現在138%
リーマンショックの大底時のように、ウォーレン・バフェットに救済を頼む企業はまだ皆無だという。
以前にも述べたが、驚いたことに、まだ「パニックの兆候」が全くみえていない。確かに、追加証拠金の請求がいくらか発生し、投機家がいくらか一敗地にまみれた。ところが、同時に、ほとんどの投資家が回復期待から機を逃すまいと構えている。
S&P500とNY原油先物の推移
QEインフィニティ(無限大介入)でプチ・バブルが発生
残念ながら、こんな按配では相場が大底を打ったとは言えないだろう。下の相場参加者の心理状態でいえば、現状はまだ戻りのB波の段階である。「パニック、降伏、落胆」といった感情は、現在の戻りのB波が終わった後のC波での感情である。
エリオット波動の基本と波の個性
1929年の世界大恐慌後のNYダウの推移 大底は3年後…
Forbes JAPANの報道によると、世界最大のヘッジファンドのブリッジウォーター・アソシエーツ創業者でビリオネアのレイ・ダリオは「復興は3年以上先」と述べたという。
QEインフィニティや財政出動でまたプチ・バブルが再燃する可能性はないわけではないが、コロナ禍で世界は中国型の国家資本主義(社会主義)に向かっている。資本主義の危機と同時に民主主義の危機も到来している。ゼロ金利下でいくらでも債務を積み上げ、それを返す必要がないという理論はいわゆる学者の机上の理論であり、現実には機能しないだろう。いまや不良債権のゴミ箱と化した中央銀行が相場の主役となっているが、ここから3年以内に取り返しのつかない金融システムの破綻を迎えるだろう。
連邦債務の推移と2050年までの予測値
4月30日現在、米国のバフェット指標は138%、日本のバフェット指標は126%である。今回の急落相場前の日本のバフェット指数は168%で推移していた。この数字は過去の中央値である140%を上回っており、日本のバフェット指数を算出しているgurufocus社では、170%近いバフェット指数の水準で日本株に長期投資をすると、向こう8年間はマイナスリターンになると予測していた。
コロナ禍の未曽有の経済危機で、これから日本のGDPは間違いなく下がっていくだろう。分母のGDPが下るとバフェット指標は上昇し、株はますます割高になっていく。
日本株のバフェット指標(株の時価総額÷GDP)4月30日現在126%
日本のGDPの推移(1986~2020年)
株が投資するに値する価値を生むのは、下のバフェット指標の黄色の帯のゾーン、70~50のレベルまで下落した時である。
バフェット指標とバリューゾーン
グリーンストリートの商業用不動産指数
グリーンストリートが発表している米国の商業用不動産指数をみると、最新のデータ(2020年2月)の数字は133.5となっている。この指標はリーマンショック前の商業用不動産指数のピークを100として計算したもので、現在の商業用不動産指数が、いかに割高かがわかる。
モルガンスタンレーは12月に2番目のコロナウイルスのピークがくると予想
1918年のスペイン風邪のパンデミック(世界的大流行)の推移
3年間に3回のピークがあった
これまでFRB(米連邦準備制度理事会)は金利を引き下げ、「市場を支える」政策をおこなってきた。しかし、これらの行動は意図しない結果をもたらし、金融市場で「ブームと破裂」が繰り返し起こる現象につながった。これまでの10年で積みあがった過剰流動性が作り上げたモンスターバブルが、現在のような小さな修正でリセットされることはないだろう。
コロナ禍でヒト・モノ・カネの動きが止まり、1929年の世界恐慌以来の危機を迎えている。ライフサイクルでみた長期投資の買い場はもう少し先になりそうだ。
1929年以来の危機と言われる今、これから失業者が沢山増えるだろう。コロナ禍のドサクサに紛れて、一気に監視社会が到来しようとしている。
近代以前の権力は、ルールに従わなければ殺す(従うならば放っておく)というものだったが、近代の権力は、人々の生にむしろ積極的に介入しそれを管理し方向付けようとする。
こうした特徴をもつ近代の権力を「生-権力」とフランスのポストモダンの哲学者フーコーは呼ぶ。
具体的には2つの現れ方があり、1つは個々人の身体に働きかけて、それを規律正しく従順なものへ調教しようとする面である。学校や軍隊において働くこの種の権力は「規律権力」とも呼ばれる。
もう1つは、統計的な調査等々にもとづいて住民の全体に働きかけ、健康や人口を全体として管理しようとする面である。
こうしたフーコーの権力論は、近代になって個々人の自由が広く認められるようになったという一般的なイメージを覆し、近代は個々人を巧妙に支配管理する権力技術が発達してきた時代として捉えるものだった。
またこれは、政治権力を奪取しさえすれば理想社会が到来すると見なす、マルクス主義的な権力観に対する根底的な批判でもあった。
(西研一)
スマホの位置情報やキャッスレス通貨の普及で人間の管理が始まっているが、人間を家畜のように監視する「生-権力」が世界中でまかり通っている。ジョージ・オーウェルが『1984』で描いた全体主義と家畜社会の足音がきこえてきている。
NY大学のヌリエル・ルービニ教授は『2020年代に訪れる大不況』というレポートで、「経済のより広範なレベルがデジタルの影響を受ける。何百万人もの人々が職を失ったり、収入を減らしたりするなか、貧富の格差はさらに拡大するだろう。将来のサプライチェーンショックを防ぐために、先進国の企業は低コスト地域から高コストの国内市場に生産を戻す。しかし、この傾向は、国内の労働者を助けるのではなく、自動化・AI化をさらに加速させ、賃金に下押し圧力をかけ、ポピュリズム、ナショナリズム、排外主義の炎をさらにあおるだろう」と述べている。
現在、FRBは再び米国の中間層を犠牲にしている。この20年でFRBが富裕層の利益のために中間層を標的にしたのは3回目だ。ジャンク債を含むリスクの高い債務の救済は、従業員ではなく大口の投資家を助ける(逃げ場を作る)ためのものである。
債券王ジェフリー・ガンドラックとスコット・マイナードの相場観
1,480億ドルを運用する債券王ジェフリー・ガンドラックは、「間違いなく混乱から抜け出ていない。私は安値を再度うかがう可能性が高いと思う」「人々は少なくともこれから起きる社会的な不安の大きさを理解していない…2,600万人以上の人々が職を失ったのだ」「2009年のどん底から作り上げたすべての雇用は失われたのだ」「実際、自分はちょうど2,863でS&Pの売りにかけた。このレベルでは上値のぶれも下値のぶれも非常に少ないと思う。自分は3,000に行くとは思わない。安値、さらなる下落の可能性があると思う。2月ほどの極端な空売りのポジションは取ってはいない」と、CNBCの「ハーフタイムレポート」で発言した。
債券市場の運用者は現在の相場に対して楽観的には見ていない。ガンドラックと同じ債券運用者である投資運用会社グッゲンハイム・パートナーズのスコット・マイナードは、「第3四半期に景気がV字回復を遂げ、GDPがパンデミック(世界的な大流行)前の水準に回復すると考えるのは非現実的だ」、「打撃を受けた企業や個人を支援するために政府はできる限りを尽くしているが、それでも支援策は不十分かつ的外れであり、多くの意図せぬ結果をもたらすだろう」と述べている。
新興国危機を市場は織り込んでいない
グッゲンハイム・パートナーズのスコット・マイナードは、「グローバル資本市場は、エマージング諸国企業のデフォルト上昇可能性が高まり始めていることを織り込んでいない」と、新興国危機に警鐘を鳴らしている。
世界的なパンデミックはまもなくエマージング市場を直撃するだろう。その次に来るのはモノと食糧の不足、そして社会不安である。既にエマージング市場は、コモディティ価格の下落や中国および先進国の一部における封鎖の経済的影響を受けている。
前例のない速さでエマージング市場から資本が流出しているにも関わらず、これらは現在市場で正確に織り込まれていない。株、債券、通貨、ローン、貿易信用などあらゆる形のホットマネーが流出し、外貨準備が減少している一方で、エマージング諸国の政府は、通貨ペッグの維持やボラティリティ抑制を目的としたり、外貨建債務の自国通貨換算額の急増を抑えたり、通貨価値下落によるさらなる資本流出を抑えるために、市場介入を行っているからである。
エマージング諸国の政府および企業が負う債務総額の国内総生産(GDP)に対する比率はこれまでよりも大幅に上昇しており、現状では180%とアジア債務危機の際の110%を上回っている。最近数カ月間では、ブラジル、南アフリカ、アルゼンチン、ウクライナ、ナイジェリア、インドネシアなど多くのエマージング諸国において、市場からのプレッシャーが通貨の下落、クレジットデフォルトスワップ(CDS)や債券のクレジットスプレッドの拡大といった形で顕在化している。
出所:スコット・マイナード『迫りつつあるエマージング市場の危機』
コロナ禍の未曽有の不景気の中で、コロナ騒動がなくても脆弱だったトルコや南アフリカの金融システムが危うい状況を迎えている。スワップ金利も正常なレートが提示されない事態も予想される。FRBのQEインフィニティでドル不足は多少緩和されたが、ドル不足は依然解消されていない。このような状況の中での新興国通貨への投資は、リスクリターン比が合わない投資となっている。市場は常に弱いところを突いてくる。新興国通貨の変動には注意が必要だ。
トルコリラ/円(日足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル
トルコリラ/円(週足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル
ラジオNIKKEI音楽特番『Music Voyage Anthology』―こんな時だから届けたい、誰もが口ずさめる応援歌―
巣ごもりの中、ゴールデンウイークを迎えているが、今週のラジオNIKKEIでは、楽天証券の楠社長、永倉弘昭常務執行役員、楽天証券広報の松崎裕美さんが登場する音楽番組が放送される。
放送日程は、
4月29日(水・祝)
12:20~13:20 Music Voyage Anthology 矢沢永吉特集
生き様すべてがかっこいい。時代を超えて活躍を続けるロッカー・矢沢永吉さんの凄さを、楽天証券の永倉弘昭常務執行役員とタレントの津田麻莉奈さんがヒットソングとともにお伝えします。やっちゃえ!矢沢永吉特集!
5月5日(火・祝)
10:30~11:30 Music Voyage Anthology ~みんなへの応援歌~
楽天証券・楠雄治社長と、現役ファンドマネージャー・石原順さんによる、「こんな時だから届けたい、誰もが口ずさめる応援歌」をお送りします。
13:00~15:00 石原順の日々の泡~音楽と出会った日
マーケット番組でお馴染みの現役ファンドマネージャー・石原順さんの知識は、投資や経済だけではございません!音楽に関しても知識豊富。かっこいい大人のエッセンスがつまった楽曲を、石原順さんが語ります。
18:00~19:00 Music Voyage Anthology ゴールデンナミエウィーク
ゴールデンウイーク中に、ゴールデンな安室奈美恵さん特集です。安室奈美恵さんへ愛を叫びたい!輝き続ける彼女の楽曲を、楽天証券広報の松崎裕美さん、フリーアナウンサーの上野優花さん、メディカルドクター・タレントの川村優希さんがご紹介します。
今年のゴールデンウイークの『Music Voyage Anthology』、聞き逃した方は、放送後の番組が聴けるラジコのタイムフリーでお楽しみ下さい♪
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