集団免疫はいつ実現するか?

 一般に、感染症は、一度かかると二度はかからない傾向があります。感染して回復すると、体内に免疫(病原ウイルスを排除する抗体)ができるからです。

 感染症が大流行し、生き残った人が免疫を持つことで感染が終息に向かうことを、「集団免疫」と言います。人口の6~7割が免疫を持てば、感染は終息します。

 医学が未発達だった時代、致死率の高い感染症が大流行して、終息するには長い年月がかかりました。回復して免疫を持つ人が、人口の6~7割を占めるまで、感染に歯止めがかかりませんでした。

 たとえば、1918年(第一次世界大戦末期)、世界的に大流行したスペイン風邪(当時は風邪と考えられていたが実際はインフルエンザ)がそうです。世界中で、何百万という死者を出しましたが、生き残った人々が免疫を持つことで、やっと終息に向かいました。

 新型コロナでも、一度かかって回復したヒトには、抗体ができているので、二度はかからないと考えられています。ただし、これは厳密に証明されたわけではないので、現時点ではWHO(世界保健機構)は「免疫の保証なし」と警告しています。抗体の形成が不十分なまま回復し、二度感染する事例が出ているからです。それでも、十分な抗体が形成されて免疫を獲得した人が増えていることは事実と考えられます。

 新型コロナでは、感染者の8割は軽症のまま回復すると考えられています。その回復者の血中には、抗体が形成されているはずです。それを調べるための、「抗体検査」が、米国や欧州などで一斉に始まっています。

 米国ニューヨーク州のクオモ知事は23日の記者会見で、無作為に抽出した3,000人を対象とした抗体検査で13.9%が抗体を持っていたと発表しました。州全体の人口(1,950万人)の13.9%が抗体を持っていると仮定すると271万人がすでに抗体を持っていることになります。これは、公表されている同州の感染者数(25万人)の10倍を超える人数です。

 感染者の正確な把握は今でもできておらず、実際の感染者数は報告されている数よりも、はるかに多い可能性があります。軽症で、ほとんど自覚症状がないままに回復しているために、感染者に数えられていない人が、たくさんいると考えられます。米国だけでなく、欧州の抗体検査でも、抗体保持者が増えていることが観測されており、実際の感染者数は、報告より10倍以上多いとの予測が出ています。

 ところで、クオモ知事の発表では、ニューヨーク州の中でも感染が深刻だったニューヨーク市だけに絞ると、あくまでも標本調査の結果では、約20%が抗体を持っていたとの結果が出ています。人口の6割以上が免疫を持つ、集団免疫にはまだ遠いものの、少しずつ、免疫保持者が増えてきていることが分かります。