決算レポート:ディスコ

1.2020年3月期4Qは17%増収、40%営業増益

 ディスコの2020年3月期4Q(2020年1-3月期)は、売上高387億8,400万円(前年比16.9%増)、営業利益107億8,100万円(同39.6%増)となりました。

 前4Qの出荷額は、前4Qは398億5,600万円(前年比20.1%増、前3Q比13.2%増)と順調に伸びました。装置(ダイサ、グラインダ)、消耗品(ブレード)がともに伸びました。一方、新型コロナウイルス禍の影響で、特に中国において装置の設置、検収が滞る半導体工場がでたため、前4Qは出荷額に対して売上高の伸びが低いものになりました。ただし、全社的には検収が進んだため、前4Qは好業績となりました。

 この結果、2020年3月期通期業績は、売上高1,410億8,300万円(同4.4%減)、営業利益364億5,100万円(同5.7%減)となりました。2018年3月期1Qに業績が前回ブームのピークを付けて以来、半導体設備投資の調整により2018年3月期2Qから2020年3月期1Qまで業績が悪化しました。しかし5ナノ半導体の新規投資と7ナノ半導体の増強投資、NAND投資の回復をテーマに半導体設備投資が回復に向かう中で、ディスコの業績も前1Q(2020年3月期1Q)で業績は大底を付け順次回復してきました。

(注:ディスコの収益認識基準は2019年3月期までは出荷基準だったため、出荷額と売上高が一致していましたが、2020年3月期より相手先工場で装置の動作を確認する検収が必要な検収基準となりました。そのため、2020年3月期1Qより出荷額と売上高は一致しなくなりました。)

表4 ディスコの業績

株価 24,680円(2020/4/23)
発行済み株数 35,951千株
時価総額 887,271百万円(2020/4/23)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
注2:発行済み株数は自己株式を除いたもの。

グラフ12 ディスコ:売上高、受注高、出荷額(連結ベース)

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ13 ディスコの月次受注高

単位:億円
出所:会社資料より楽天証券作成

2.2021年3月期も好業績が予想される

  2021年3月期は、新型コロナウイルスの影響で、1~2Qの業績が足踏み状態となると思われます。ディスコでは、引き合い自体は強いものの、引き合いが一旦ピークを過ぎたと考えています。そして、新型コロナウイルスの影響が顧客の発注にどう影響するか注視しているところです。

 また、会社予想では、2021年3月期1Qは前4Q比減収減益となる見込みです。新型コロナウイルスによる検収の遅れが生じる可能性があります。

 一方で、私の予想では、新型コロナウイルス禍の影響は少なくと今上期まで、長引く場合は今期いっぱい続くと予想されます。ただし、中国の電子機器生産が回復途上にあること、アメリカが経済対策として約210兆円+アルファの投資を実行する用意であること、日本も大型予算による景気回復を目論んでいることから、夏以降にはある程度不況が和らぐ可能性があります。

 半導体需要を展望すると、特集1で述べたように、従来から今年以降の半導体需要の中核と言われてきた5Gスマホとデータセンターに加え、デスクワーカー向け、学生向けの高性能パソコン需要がクローズアップされてきました。高性能パソコンに搭載される高性能CPUとDRAM、NAND(SSD)はいずれも半導体設備投資の刺激要因です。また、高性能パソコンは企業と学校に接続して使われるため、データセンターの増強投資にも結び付きます。

 遊びの世界でも、巣ごもりによって動画配信サービスの需要が伸びるにしたがって、データセンター需要が伸びると予想されます。

 そのため、2021年3月期、2022年3月期と、四半期ごとの波はあると思われますが、ディスコは好業績が続くと予想されます。楽天証券の2021年3月期業績予想は、前回予想と同じ売上高1,650億円(前年比17.0%増)、営業利益480億円(同31.7%増)とします。

 また、半導体設備投資が2022年3月期も持続的に伸びる可能性があります。楽天証券では2022年3月期を売上高1,900億円(同15.2%増)、営業利益580億円(同20.8%増)と予想します。

3.目標株価を3万6,000円から3万2,000円に引き下げる

 会社側が引き合いが当面はピークを過ぎたと考えていることは、短期的には株価にネガティブに働くと思われます。そのため、今後6~12カ月間の目標株価を3万6,000円から3万2000円に引き下げます。2021年3月期の楽天証券予想EPS 995.8 円に想定PER30~35倍を当てはめました。

 短期的には株価は波乱が予想されますが、中長期での投資妙味を感じます。