ひと月足らずで大きく変わった景況感

 ここひと月足らずで米国の景況感は激変しました。新型コロナウイルスの拡散を防ぐため、米国の30を超える州が外出禁止令を出しました。その結果、レストラン、小売店、劇場、映画館、スポーツ施設、見本市会場などのさまざまなビジネスが大きな制約を受けています。自宅で待機を言い渡され、収入がなくなったサービス業に従事するワーカーが大挙して失業保険を申請したため、過去2週間の新規失業保険申請件数は空前の悪化を見ました。

新規失業保険申請件数 

単位:件
出所:セントルイス連銀

 航空会社の旅客は激減、小売店も大打撃を受けており、店舗の家賃を払えないところが続出しています。

 企業は、あらかじめ銀行と取り決めてあったクレジットライン(信用与信枠)の目いっぱいまで借り入れを行い、今月~来月のやり繰りを何とか乗り切るための準備をしています。そして、1月から2月の決算発表時に示した2020年第1四半期決算のガイダンスを次々に撤回しています。しかし、あまり急激に景況感が変わっているので、新しいガイダンスを示す企業は少なく、会社側予想そのものを提示することすら止めてしまった企業が大半です。

 このような状況を受けて、アナリストたちが試算する2020年のコンセンサス予想はスルスル下がってきています。

S&P500コンセンサスEPS予想推移(2020年通年予想)

単位:ドル
出所:ファクトセット

 しかしこの下方修正されたS&P500コンセンサスEPS(1株当たり純利益)予想は、まだまだ「後追い」になっている観があり、実際にはもっと数字は悪くなるだろうという観測もあります。

 言い直せばEPS予想に基づいたバリュエーションを手掛かりとして投資判断するのが極めて困難な状況になっているということです。