高値を更新する米国株式は「もう割高」なのか

 それでは、新年に最高値を更新し続ける米国株は「もう割高」なのでしょうか? 古くからの相場格言に「もうはまだなり、まだはもうなり」があります。「もう相場が天井(底)にあると思い、売り(買い)に転じても、まださらに一段の上げ(下げ)が待っている可能性がある」との意味です。

 実際、2009年春を起点とした強気相場を維持してきた米国株は、2018年末にみられたような株価反落を挟みながらも株高基調を取り戻して高値を更新。株価が高値を更新するたびに「高値警戒感」が広まりました。

 図表4は、S&P500指数の予想PER(株価収益率)と長期金利(米10年国債利回り)の推移を長期で示したものです。予想EPSはS&P500指数ベースの12カ月先予想EPS(1株当り利益/市場予想平均)を使用しています。現在のS&P500指数の予想PERは約19.3倍で、長期金利は約1.58%です(2月14日)。

 1992年以降の予想PERの平均は約16.2倍で「現在の予想PERは過去平均より高め」と言えます。ただ、長期金利が、同期間の平均(4.3%)の半分未満であることに注目です。例えば、2018年秋以降に米国株が急落した際は、長期金利は3.2%を超えました。現在の長期金利水準はその半分未満ということです。

 図表4が示すとおり、ここ数年の水準と比較して予想PERは高いものの、長期金利も歴史的な低水準にあることがわかります。

図表4:米国株の予想PERと長期金利の推移を振り返る

*上記は参考情報であり、将来の投資成果を保証するものではありません。 出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(1992/1/1-2020/2/14)

 図表5は、比較的簡便なバリュエーション手法として知られる「FEDモデル」で米国株式の水準分析をしたものです。この分析は、FRBが1997年に議会に提出した報告書に盛り込まれた指標(モノサシ)で「FEDモデル」と呼ばれてきました。

 予想PERの逆数(予想EPS÷株価)である「益利回り」と米長期金利との差(=益利回りスプレッド)を試算し、その相対的な高低で「債券と比較して株式が割高なのか割安なのか」を分析します。

 このモデル(益利回りスプレッド=長期金利-予想益利回り)では、益利回りスプレッドが高いほど「株式が債券と比較して割高」と判断され、同スプレッドが低いほど「割安」と推定されます。