今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後、投資してみたい金融商品」で、「金やプラチナ地金」と回答したお客様の割合に注目します。

 当該質問は複数回答可で、選択肢は、国内株式、外国株式、投資信託、ETF(上場投資信託)、REIT(上場不動産投資信託)、国内債券、海外債券、FX(外国為替証拠金取引)、金やプラチナ地金、金先物取引、原油先物取引、その他の商品先物、特になしの13個です。

図:質問「今後、投資してみたい金融商品」で、「金やプラチナ地金」を選択した人の割合 (2009年1月~2020年1月)

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 2020年1月の調査において、「金やプラチナ地金」を選択した人の数は全回答者の16.6%でした。これは、2017年9月以来、およそ2年半ぶりの水準です。

 調査期間は1月27日(月)から29日(水)であったことから、新型肺炎の感染拡大による不安増大が、個人投資家の皆様の金への関心を高めたと考えられます。また、新型肺炎の感染拡大だけでなく、1月3日に発生した米国によるイラン要人殺害事件も、不安増幅の要因になったと考えられます。

 世界規模の感染症、複数の国が関わる政治色の強い事件…これらが重なったことで、“何かあったら金(ゴールド)”という思惑が強まり、今回の調査で、「金やプラチナ地金」を選択した人の割合がおよそ2年半ぶりの水準に上昇したのだと思います。

 筆者はこの結果を受け、もう一歩踏み込んだ分析をしてみました。楽天DIで毎月行われている質問の中に、「1カ月後の日経平均の見通し」について、“強気”、“中立”、“弱気”のいずれかを選択するものがあります。

 今回の調査で「金やプラチナ地金」を選択した人たちが、「1カ月後の日経平均の見通し」を、どのように回答をしたのかについて調べました。

図:「金やプラチナ地金」を選択した人の「1カ月後の日経平均の見通し」の選択状況(2020年1月調査)

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 今後投資をしてみたい金融商品に「金やプラチナ地金」を選択した人において、「1カ月後の日経平均の見通し」を“強気”と回答していた人の割合は11.9%、“中立”は37.3%、“弱気”は50.8%でした。

 この結果は、金やプラチナ地金に関心を抱いている人の中に、目先の日経平均の動向に不安を感じている人が比較的多いことを示しています。

 逆に言えば、株式投資に不安を感じる人の中には、不安な時期を上手く乗り越えるべく、貴金属への投資も視野に入れている投資家の皆さまが存在することを、示していると言えます。このデータから、分散投資の考え方を、積極的に取り入れようとしている投資家の方がおられることを、改めて感じた次第です。

 引き続き、設問「今後、投資してみたい金融商品」で「金やプラチナ地金」と回答した人の割合、そして「1カ月後の日経平均の見通し」に、注目していきたいと思います。

表:今後、投資してみたい金融商品 2020年1月調査時点(複数回答可)

投資対象 割合 前回比
国内株式 53.21% ▲ 0.79%
外国株式 41.93% + 1.21%
投資信託 38.58% ▲ 6.88%
ETF 26.67% ▲ 3.86%
REIT 14.74% ▲ 1.56%
国内債券 5.35% ▲ 0.50%
海外債券 8.11% ▲ 0.08%
FX 9.69% + 0.73%
金やプラチナ地金 16.63% + 3.27%
金先物取引 2.43% +0.57%
原油先物取引 1.44% + 0.01%
その他の商品先物 1.58% + 0.52%
特になし 7.22% + 1.11%
出所:楽天DIのデータより筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2020年1月調査時点(複数回答可)

国名 割合 前回比
日本 33.23% + 0.53%
アメリカ 60.57% + 1.01%
ユーロ圏 5.12% ▲ 0.39%
オセアニア 3.61% ▲ 1.24%
中国 8.75% ▲ 1.64%
ブラジル 3.92% + 0.35%
ロシア 2.81% + 0.12%
インド 24.43% ▲ 4.45%
東南アジア 21.72% ▲ 2.79%
中南米(ブラジル除く) 2.48% ▲ 0.01%
東欧 1.82% ▲ 0.12%
アフリカ 6.27% ▲ 0.32%
特になし 8.35% + 0.16%
出所:楽天DIのデータより筆者作成