2014年にエボラ出血熱(当時の呼び名)ショックで世界株安

 まだ、新型コロナウイルスの感染実態は正確にはわかっていません。また、これからどこまで感染が拡大するか予想するのも困難です。そうした不安から、短期的に世界の株がさらに動揺する可能性もあります。

 ただし、私は、あくまでも個人的見解ですが、長期的な視点に立てば新型ウイルスが世界景気や世界の株式に与える影響は、限定的だと思います。その理由を詳しくお話しする前に、まず、2014年にエボラ出血熱(当時の呼び名、現在は「エボラウイルス病」という)で世界的に株が売られた時の経験を話します。

 まず、2014年の日経平均株価チャートをご覧ください。

2014年の日経平均株価:2013年末~2014年12月末

 2014年を簡単に振り返ります。2014年は、4月に消費税引き上げ(5%→8%)があったため、4~6月に日本の消費が落ち込み、景気に停滞感が広がった年です。ただし、景気停滞は短期で、日本の景気は年後半にかけて持ち直しました。後から振り返れば、景気後退には至らず、景気拡大が続いた年です。

 この年の日経平均は、1月から4月まで、消費増税後の景気停滞などを織り込んで下落しました。ただし、年後半は、景気停滞からの回復を織り込みつつ、日経平均は上昇しました。
ところが、年後半、10月に日経平均は一時急落しています。エボラ出血熱が世界に拡大する不安、世界景気が悪化する不安などから、世界的に株が急落し、日本株にも外国人投資家の売りが増えました。

 ただし、10月の下落は一時的でした。景気回復が続いたこと、日銀が大規模な追加金融緩和を発表したことなどを受けて、11月には世界的に株が急上昇、日経平均も外国人による買い戻しで急騰しました。

 エボラ出血熱は毒性が強く、感染して早期治療しないと致死率の高い疾患です。2014年6月より西アフリカで大流行し、欧州・米国でも感染者が出ました。エボラ出血熱への 恐怖から、欧米で一時外出を控える動きが広がり、それが世界的な景気悪化につながるとの懸念も出ました。
日本では感染者は見つかりませんでしたが、日本でもエボラ出血熱への恐怖が広がっていました。「もし日本で感染者が出れば、日本の消費がさらに落ち込み、日経平均は1,000円以上下がる」という人もいました。

 アフリカで多数の死者が出たエボラ出血熱ですが、恐怖のピークは2014年10月でした。その後、感染防止策の徹底や、治療薬の開発が進み、感染は徐々に終息に向かいました。後から振り返れば、エボラ出血熱が、世界全体の景気に与えた影響は限定的でした。