米雇用市場は、今後ゆるやかにピークアウト

 しかし、米雇用市場の今後については、徐々に鈍化していくとの見方が増えています。

 米労働省が発表するJOLTS(雇用動態調査)によると、9月の非農業部門の求人数は1年半ぶりの低水準に落ち込みました。直近の非農業部門雇用者数が大幅増だったことと一見矛盾しているようですが、雇用拡大サイクルの終了直前においては、求人率が減少したにもかかわらず雇用が増加することはよくある現象です。

 求人率の減少は、企業業績の悪化というよりも、離職率の減少が主な理由と考えられています。つまり、会社を辞める人が少なくなったから新規採用が減ったのです。なぜ離職率が減ったのかというと、「辞めても次のいい仕事が見つかる」といった期待が低下しているため。次の仕事が見つかりにくいということは、労働市場の成長が止まったことを示唆します。10月はJOLTSが改善してFRBも一安心しましたが、これが本物なのか、それとも一時的な反発にすぎないのか、今後の推移を見守る必要があるでしょう。

 もっとも、現在のマーケットは、雇用統計のような「安全な」指標はどうでもよくて、米・イランの「危険な」関係だけに集中しています。1月のドル/円の方向を決めるのは雇用統計よりも地政学リスクです。