2020年を通じて警戒したい「7大リスク」とは
可能性としての「新春安」を含め、2020年に市場参加者がリスク選好姿勢からリスク回避姿勢に転じる発端となりそうな潜在的要因を「7大リスク」として下記しました。それぞれの生起確率は高くなくとも、複数のリスク要因が同時的に顕在化すると、日米株価とドル/円に下落(円高)圧力となりやすいので警戒が必要です。
(1)米中対立の再激化:いったん「貿易合意」に至った米中交渉ですが、IT分野の覇権争い、香港・ウイグルの人権問題、安全保障面を巡る合意は困難とされます。1月11日の台湾総裁選挙の結果次第で「一国二制度」を巡る米中対立が激化する可能性も否定できません。2018年や2019年と同様、新年も米中対立やトランプ発言が波乱要因となりそうです。
(2)ワシントン情勢の行方:市場は米・大統領選挙について、「トランプ再選」をメインシナリオ、「民主党ならバイデン当選」をサブシナリオとして想定しているようです。ただ、共和党支持母体の福音派から「トランプ弾劾」を支持する声が出ており、民主党候補者争いもリスク要因。ウォーレン氏やサンダース氏など左派が優勢となれば市場は不安を強めそうです。
(3)BREXITを巡る不安:12月12日に実施された英国総選挙で、BREXIT(英国のEU離脱)を主張するジョンソン保守党が勝利を収めました。2020年1月末の離脱期限に向け道筋は整いそうです。ただ、2020年末までにEU各国とFTA(自由貿易協定)で合意する必要があり、その実現は危ぶまれています。「合意なきEU離脱」は引き続きリスク要因です。
(4)米長期金利の上昇加速:米景気は雇用情勢の堅調を背景とする個人消費好調と金利低下の恩恵を受けた住宅投資回復が製造業の低調を補っています。米中の貿易合意で製造業の景況感が改善し、インフレ期待も回復に向かうと、米長期金利の上昇が加速する可能性があります。金利上昇は株式バリュエーションに圧力となりやすく警戒要因です。
(5)社債市場の急落懸念:世界の中央銀行が供給してきた「過剰流動性」が株式だけでなく社債(クレジット)市場にも行き渡り、特にハイイールド債市場の過熱感が警戒されています。また、中国を中心に新興国の債務残高は約55兆ドル(約6,000兆円)に拡大し「債務の崖」と警戒されています。米長期金利上昇で「債務リスク」が嫌気される事態に要注意です。
(6)中東情勢の緊迫化:トランプ政権は、支持母体であるキリスト教福音派と資金力が豊富なユダヤ教徒を重視するため、中東で「親イスラエル政策」を推進してきました。このことがイスラム教徒やアラブ諸国の反発を招いています。また、トランプ政権はイランに対し強硬姿勢をみせてきました。中東情勢が「地政学リスク悪化の震源」となるリスクがあります。
(7)朝鮮半島の危機再燃:米国と北朝鮮の対話が行き詰まっており、いったん安定していた朝鮮半島情勢が再び危機に陥るリスクも否定できません。国連安全保障理事会による経済制裁を緩和させる目的で北朝鮮がICBM(大陸間弾道ミサイル)の実験などに踏み出せば、米国が対朝政策を転換させ、2017年にみられた軍事的緊張が高まりかねません。