11月の金融指標、人民元貸付とTSFの増加に伴い融資構造も改善
中国人民銀行(中央銀行)が発表した最新金融指標を見ると、人民元貸出残高の月間純増額は11月に1兆3,900億元と、前年同期比で11.2%増加。ほぼBOCIの予想通り(1兆3,000億-1兆4,000億元)の水準に達し、市場予想(1兆2,000億元)を上回った。うち新規の企業向け融資は6,794億元で、前年同月比1,030億元増。短期貸付、中長期貸付がいずれも伸び、融資構造の改善をうかがわせた。こうした改善傾向の持続は、選択的金融緩和策の下、生産・投資が回復傾向にあることを示している。
実体経済の流動性を示す中国独自の指標である「社会融資総量」(TSF)は、11月に1兆7,500億元で、前年同月比1,505億元の伸び。市場予想(1兆4,900億元)を上回り、BOCIの予想通りの数字となった。主に人民元貸付の力強い伸びがTSFを押し上げる半面、公司債(社債)の低迷が一部足を引っ張った。BOCIは続く12月の新規の人民元貸付について、1兆1,500億-1兆2,500億元(前年同月は1兆800億元)を見込み、月末残高は前年同月を12.4%上回るとの見方。12月の社会融資総量に関しては、1兆5,000億-6,000億元(前年同月は1兆6,200億元)との予測を示している。
11月末の人民元預金残高は前年同期比8.4%増と、10月比で0.2ポイント加速。主に財政預金(中央・地方政府預金など)やノンバンクの預金が伸びた。
11月には長期のSHIBOR(上海銀行間取引金利)が上向く中、流動性は安定的だった。人民銀行は15営業日にわたって公開市場操作(リバースレポ)を見送った後、18日に再開して1,800億元を供給。この際、5日のMLF(中期貸出制度)金利引き下げと足並みを揃え、オペ金利を0.05ポイント引き下げた。ただ、オペの実施は2回にとどまり、20日以降は再び見送っている。長期SHIBORは年末の資金需要を反映し、段階的に上昇。人民銀行は15日、1年物 MLFを通じ、市中に中長期資金を供給している。
5年物LPR(最優遇金利:人民銀行が毎月集計する金利指標)が引き下げられる半面、住宅ローン金利は11月も小幅に上昇し、初回購入者向けの平均金利は前月を0.01ポイント上回る5.53%となった(融360調べ)。11月には短期預金金利の上昇傾向も続いた。
銀行が11月に発行した理財商品は5,883種で前月比14%減。前年同月比では50%減と、1-10月からさらに減少ペースが加速した。3カ月物、1年物商品の予定利率は11月2日に3.95%、4.07%。10月27日比で0.09ポイント、0.03ポイント低下した。
香港株式市場のH株銀行指数は11月に1.73%下落したが、ハンセン指数(2.08%下落)をアウトパフォーム。年初来ではH株銀行指数は11月29日時点で2.3%高。不透明な環境下でのディフェンシブ性を強みにハンセン指数の1.9%高を小幅に上回った。個別では11月にH株銀行銘柄の下落率トップとなったのは、重慶農村商業銀行(03618)で7.16%安。中国光大銀行(06818)と中信銀行(00998)がこれに続いた。