融資需要の増大で資金ひっ迫傾向、政策面では「賃貸住宅市場の育成」に注目

 中国のインターバンク市場では8月25日-9月1日週に、さらなる資金ひっ迫傾向が見られた。中国人民銀行(中央銀行)が資金供給を緩やかなペースに抑える半面、融資の伸びや鞘取り関連の規制強化を受け、資金需要が高まったため。人民銀行はこの週、リバースレポを通じて銀行間システムに計2800億元を供給したが、週内に5600億元分のリバースレポが償還期限を迎えたために吸収超過となった。人民銀は引き続き安定的な資金供給を実施しているが、人民元貸し付けの加速や、規制強化を受けた銀行の「オフバランス取引のバランスシートへの付け替え」を背景に、資金重要は今後も増す見込み。BOCIは中国経済の予想以上の堅調が融資需要の伸びを後押しすると予想し、短期的に流動性ひっ迫感が続くとみている。なお、同週には、7日物、翌日物のレポ金利がそれぞれ3.36%(前週3.58%)、2.86%(同2.94%)に低下。SHIBOR(上海銀行間貸出金利)は翌日物が2.81%(前週2.86%)、7日物が2.88%(同2.91%)に下向いた。

 債券利回りは8月25日-9月1日週に小幅に上昇。5年物、10年物の政府債利回りが3.62%(前週3.61%)、3.64%(同3.63%)となった。BOCIは8月のPPI(生産者物価指数)上昇率の加速を受け、工業セクターが今もリフレーション状態にあると指摘。短期的には債券利回りの上昇圧力が存在するとみている。

 為替市場では北朝鮮関連の地政学リスクを受け、リスクオフ姿勢が鮮明。ハリケーン被害や雇用指標の予想下押し、北朝鮮問題などから、米ドル相場は不安定な展開となった。こうした中、同週に目を引いたのは、ドルインデックス(複数の主要国通貨に対する米ドルの総合的な価値を示す)がやや上向く中で、人民元高が加速したこと。中国経済の底固さもあり、オンショア人民元(CNY)相場は1米ドル=6.57元(前週同6.66元)まで上昇した。BOCIは短期的に一段の元高を見込む半面、中期的には不透明感が強いとの見方。米利上げや米ドル相場動向、中国経済の減速懸念をその理由としている。

 一方、中国の政策に絡む同週の注目ポイントは、政府が北京、上海、広州を含む13都市を対象に、賃貸住宅開発の試験プログラムを認可したこと。長期的な住宅市場の過熱抑制に向け、賃貸市場の育成に本腰を入れ始めた。賃貸物件を建設することで住宅供給量を増やし、都市部の人口増に対処する方針。中国では持ち家のない農村部からの移住者などは公的サービスを受けられないが、すでに複数都市が賃貸住宅を移住者の受け皿とし、教育などの点で住宅保有者と同じサービスを保証する制度を導入した。また、これまでは省・市政府が土地販売を独占してきたことが住宅過熱の一因となっていたが、この点でも従来制度を見直し、農村部の集団組織に対して自前の土地における賃貸住宅の建設や外部向けの賃貸ビジネスを認める。これにより、農村部土地システムの「市場化」がさらに進む見通しとなった。