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第7回 訪日外国人旅行者の急増:円安を促す政策サポートの強化
イェスパー・コール
エコノミストが見た、投資のヒント
JPモルガンやメリルリンチにて、常にトップクラスの日本経済のストラテジスト、エコノミストとして知られてきたウィズダムツリー・ジャパンCEOのイェスパーコールが、今の日本経済の見方…

第7回 訪日外国人旅行者の急増:円安を促す政策サポートの強化

2017/9/13
日本観光ブームを後押しする主役:構造的な要因から為替感応度へ
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 訪日外国人旅行者の爆発的な増加は、間違いなく「アベノミクス」がもたらした最大の成功例である。2012年12月の第二次安倍内閣の発足後、1週間足らずで始まったビザ発給要件の緩和措置は着実に進展し、日本を訪れる外国人旅行者の数は月間平均で2012年の69万7,000人から直近では260万人へとほぼ4倍に増加している。

 消費動向を見ると、外国人旅行者の支出額は消費支出全体(賃料を除く)の伸びの約16%を占めている。消費全体に占める割合は1.5%未満とまだ低いが、驚異的な伸び率は国内経済、特に地域経済にとって強い追い風となっている。 

 筆者のみるところ、安倍政権が打ち出した観光戦略の重要な成果は長年にわたる為替政策の転換であろう。従来、輸入原価の上昇を招き、地元企業の業績と自治体の財政に打撃を与える円安は日本経済にとって基本的にマイナスと政策当局は考えてきたが、最近は国内経済、特に地域経済の成長を後押しするポジティブな政策ツールとみなすようになってきている。日本観光ブームの火付け役となった構造改革の効果が徐々に薄れてきているため、今後は外国人旅行者の購買力の牽引要素として為替の重要性が増していくとみられる。観光産業の活況を維持するためには円安が不可欠となろう。そう考えると、自民党の強力な支持基盤である地方の首長が円安の必要性を声高に叫んでも不思議ではない。 

日本観光ブームを後押しする主役:構造的な要因から為替感応度へ

 先進国において、日本の観光戦略は政府主導の地域振興策が最も成功した例と言えよう。まず、安倍政権は中国とASEAN(東南アジア諸国連合)諸国からの旅行者に対するビザ発給要件を徐々に緩和し、アジアで台頭しつつある中産階級の新たな旅行先としての日本に対する構造的な潜在需要を掘り起こした。

 これと並行して、政府は供給サイドの規制緩和(空港の発着枠の拡大、ホテル・旅館を対象に建築基本法で定める容積率の緩和など)にも踏み切った。その結果、数十年にわたる「空洞化」に苦しんでいた地方自治体は観光地として再生し、観光資源への再投資を続けている。これは政府による一度限りの大型投資計画に基づくものではなく、規制緩和によって生み出された純粋な民間セクターの利益機会の賜物である。

 この好循環をスタートさせただけでなく、意欲的な長期目標を設定して民間のホスピタリティ企業の需要増に対する期待感を支える努力という点で「チーム安倍」の働きは称賛に値する。2016年の訪日外国人旅行者数は2,400万人だったが、政府はこれを2020年までに4,000万人、2030年までには6,000万人へと大幅に伸ばす意向である。アジア諸国の人口および経済のダイナミクスを考えると達成可能な目標と言えよう。

 とはいえ、政府には自画自賛に興じている余裕はない。ポジティブな構造的要因は多数あるものの、すでに為替レートは外国人旅行者サイクルを左右する重要な役割を果たしている。円高は即、外国人旅行者の購買力を削ぎ、円安にはその逆の効果がある。具体的な影響はどの程度であろうか?当社の分析(1)によると、円高は外国人旅行者数と支出額の両方を押し下げる。円相場が10円上昇すると月間の外国人旅行者数は約1.2%、1人当たり支出額は約8%減少する。旅行者数への影響は軽微との印象を受けるが、支出額の落ち込み幅は大きい。従って、ホスピタリティ企業の価格設定や利益戦略にとって重大な打撃となりうる。

 無論、純粋に分析の観点に立つと、外国人旅行者の支出額を左右する因子寄与に関して統計的に有意な結論を導き出すのは時期尚早である。ビザ緩和措置による構造変化は始まったばかりで、今年前半には中国人に対するビザ発行要件がさらに緩和された。また、2012年~2017年の為替サイクルは比較的狭いレンジで上下している。しかし、強い構造的なポジティブ要因が依然として作用しているとはいえ、すでに為替感応度が大きな影響を及ぼしている現状は、今後は日本の観光戦略の成功にとって円レートの重要性が増していく一方であることを示唆している。 

 今後も外国人の日本旅行ブームを拡大していくためには、円安が是非とも必要であるため、円安を擁護する政策面の動きは強まっていくと考える。 

2017年8月22日 記

 

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