消極的な日本人。肯定的な欧米人

 日本人は預金が大好きな国民です。家計の金融資産を調べると、現金・預金が占める比率は、欧米人と比較して高く(表1)、逆に株式や投資信託等の比率は低い(表2)という結果が出ています。

出所:日本銀行調査統計局の資料「資金循環の日米欧比較(2017年8月18日)」
出所:日本銀行調査統計局の資料「資金循環の日米欧比較(2017年8月18日) 

 

日本人は、投資に消極的なのか?

 ここでは、株式への投資に絞って考えていきます。
株式投資をする際、特に使われる「株をやる」という言葉。この言葉に、「博打を打つ」
とイメージを持つ方がいることに気づきます。しかし、実際は大きく異なります。

株式投資は、博打ではない

 博打は、宝くじ、競馬、競輪などさまざまなものがありますが、共通することは、当たらなければ、賭けたお金を全部失うこと、賭けたお金のかなりの割合を胴元に取られてしまうことです。一方、株式投資は、株価がゼロにならない限り、お金を全部失うことはありません、胴元にお金を取られることもありません。したがって、こういった博打とは、本質的に異なります。しかしながら、「博打を打つ」に近い捉えられ方がされ、「怖いこと」、「やってはいけないこと」のように考える人が少なくありません。

※株式の現物投資の場合の話であり、信用取引等を除きます。

そもそも株式とは、一体何か?

 経済学では、資本という言葉があります。世の中の人々が何か商売を始めるときに用意する元手のことです。例えば、自動車メーカーが車を作って売るには、工場と生産設備、販売店舗、事業を管理する部門が入るオフィス、車を製造するための原材料など、様々なものが必要になります。それらを用意するには、当然、お金が必要です。

 事業を始めるため、会社(ここでは、株式会社)を作るときに、いろいろな人々が事業から得られる利益を分けてもらうことを条件にお金を出しますが、その分け前をもらう権利を表したものが株式です。株式は、お金を対価に他の人に売ってしまうことができますし、また他の人から買うこともできます。

 世の中には、たくさんの会社があります。国内でもっとも大きいトヨタ自動車も株式を人々に買ってもらって資金を集め、事業を行っています。「あの人は東証1部上場の会社に勤めているからエリートだ」などという言葉を聞くことがあると思いますが、少なくても証券取引所に上場されている会社であれば、全部同じ仕組みで、お金を集めて会社は運営されています。現実的に株式なしでは、会社は成立せず、この世からさまざまなサービスがなくなってしまいます。

 それにもかかわらず、日本国内では、「株」=「博打」に近い受け取られ方をすることが少なくありません。

 なぜそのような扱いをされてしまうのでしょうか。これは、株を短い期間で売ったり買ったりしてお金を稼ごうとすることや、それで大損した人の話にだけ注目が集まり、それが賭け事のように捉えられているからだと考えています。もちろん、これは乱暴すぎる話です。

 株式への投資には、買ってもすぐに売ってしまう短期投資もあれば、一度買ったら売らずに5年も10年も持ち続ける長期投資もあります。「株式に投資する」ということは、株を買うことで会社の事業が回るようにお金を出してあげながら、会社が稼いだ利益から分け前をもらうという行為ですから、じっくり時間をかけて株式を持ち続ける長期投資の方がもともとの前提であるはずです。

 つまり、本来は株の値上がりから、短い期間でお金を稼ごうというものではなく、また決して博打を打つという意味でもないのです。