老後に向け、積立期間を延伸する意義は大きい

 さて、法改正の可能性についての説明はこれくらいにして、個人のマネープランにおいて、法改正がもたらすメリットについて考えてみましょう。

 こうした積立期間の延伸を単純に言えば、「たくさん積み立てるチャンスが拡大する」ということです。

 iDeCoや企業型DCには拠出限度額があるため、50代になってから「ドカンと貯める」というアプローチを取りにくいところがあります。しかし、積み立てられる時間が増えるのであれば、ゴールを遠くに設定し最終受取金額を増やすことができます。もちろんその間の税制優遇も受けることができ、これも増やせることになります。

 仮に年間27.6万円(月2.3万円のiDeCo加入者を想定)で、5年の加入期間延伸が認められれば、138万円の元本増額になりますし、リスクを取る運用期間も延ばせます。この間の税制優遇を掛金の20%相当と概算した場合なら、27.6万円相当の節税も得たことになります。

 一般論として、老後に備える意識は若い頃は持ちにくく、引退が近づいたとき自覚が高まるので、「気がついたときにはもう55歳だった」ということがしばしばあります。しかし、65歳まで積み立てられるようになれば、最後のもうひとがんばりができることになり、有意義です。

 ちなみに「たった138万円」と考えると味気ないかもしれませんが、「老後に夫婦で旅行に10回行ける予算の上積み」と考えてみると、ずいぶん世界が違ってくると思います。平日のシニア向け旅行プランだと10万円ちょっとで結構いいところに出かけることができたりします。

 なお、現状では、継続雇用制度により60歳から65歳までは年収がガクンと下がることが多いので、60代前半はなかなか資産形成できないことがあります。しかし、50代とそん色ない年収で65歳まで働ける時代がもうすぐ到来します。そのときはおそらく、65~70歳まで継続雇用の時代にシフトするので、65歳まで貯蓄することは十分可能になるでしょう。