6月27日 
過剰債務の解消と安定成長の確保が課題、当面は“穏健”スタンス持続か

米国は過去8年にわたる量的緩和の後、他国に先駆けて出口戦略を始動させているが、中国もまた、国内経済のバブル化防止に向け、引き締め方向への舵取りを模索し始めた。ただ、こうした政策スタンスの変化はマーケットの変動要因であり、融資のスローダウンや国内経済の減速懸念にもつながる要因。レバレッジ(過剰債務)解消と金融・経済の安定とのバランス取りを余儀なくされた中国当局は最近、関連政策を再調整し、これまでより穏健な政策スタンスに転じた。BOCIは政府が極めて難しい舵取りを迫られているとの見方。中期的には、過剰債務を引き起こした要因を解消した上で、経済のバランス回復や経済構造の進化を促すため、包括的な改革を加速する必要があるとみている。

 

中国は過去数年にわたり、金融・不動産過熱に起因するバブル経済を経験したが、その反面、実体経済は弱体化。政府当局は「供給側(サプライサイド)改革」や経済構造のシフトを進める上で、こうしたアンバランスさが大きな障害となるとみている。実際、過去の金融緩和の影響で、不動産部門や金融システムにおいて債務が膨張。これが金融システムだけにとどまらず、中国の政治的安定を揺るがしかねない脅威ともなった。

 

一方、中国経済は過去2年にわたる金融緩和や供給側改革を受け、ハードランディング懸念が高まった2015年下期から持ち直しており、政府がバブル抑制策、レバレッジ解消策を進める上で重要な緩衝(バッファー)を確保できる状況となった。

 

金融当局がレバレッジ解消策として重視しているのは信用引き締め。マネーサプライM2伸び率がここに来て明らかに鈍化したことについて、中国人民銀行(中央銀行)はレバレッジ解消策が成果を挙げたと説明している。BOCIはM2目標がこの先、段階的に引き下げられると予想。M2の制御が難しくなりつつあることや、経済成長目標が段階的に引き下げられる見通しをその理由としている。

 

当局がレバレッジ解消策においてターゲットとしているのは、地方政府や国有企業の債務、金融システム内部の債務などで、ほかに住宅価格の抑制も目標の一つ。実際の方策として、流動性引き締めや金融部門の監督管理の強化(シャドーバンキング規制など)、地方政府債務の監督強化といった動きを見せた。ただ、こうした施策を受けて実体経済の減速リスクが高まっているのが現状。BOCIはM2伸び率が16年の前年比11.3%から、17年には同9%に減速すると予想。実質GDP成長率は17年に前年比6.6-6.7%に達した後、18年には同6.2-6.3%に鈍るとみている。

 

景気減速懸念が高まる中、政府はここに来て穏健スタンスに転じており、BOCIは今秋の第19回党大会に向け、安定的な政策動向が続くと予想。向こう12カ月間、米国に追随する形での利上げ(基準金利引き上げ)が行われる可能性は低いとした。ただ、中期的には不透明感も残ると付け加えている。