ウォーレン・バフェットは1,220億ドルの現金を温存している。これは、危機が来ていると彼が信じていることを明確に示している

 ウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイの現金比率は2016年以降上昇し、現在手元現金が約12兆円に達している。これは次の危機に備えた動きだろう。

 ウォーレン・バフェットは、会社の資金を株式市場に投入する代わりに、1,220億ドルを現金保有することにした。これは、危機が来ていると彼が信じていることを明確に示している。

 ウォーレン・バフェットは暴落する前に株を売り、暴落すると株を買うという逆張り投資家だ。これは、なかなかできることではない。人間の心理に素直に従って投資行動をすると、暴落する前に株を買い、暴落すると株を売らざるを得ないというバフェットと逆の行動になってしまうのである。

バークシャー・ハサウェイの手元現金

バフェット指標(株の時価総額÷GDP)

バークシャー・ハサウェイの現金ポジションとS&P500の推移

(バークシャー・ハサウェイの現金ポジションの前回のピークは、金融危機直前の2007年末の433億ドルである。2008年にはリーマン危機の最中、ゴールドマンサックスの株を安く手に入れて大もうけしたが、2008年末の現金ポジションは255億ドルに減っていた。)

 ウォーレン・バフェットは、「現在の株式市場は買うものがなく、IPO(新規株式公開)にも全く関心がない」と述べており、自社株買いより現金の温存を優先している。

「株は単純。みんなが恐怖におののいているときに買い、陶酔状態の時に恐怖を覚えて売ればいい」、「時代遅れになるような原則は、原則ではない。」、「近視眼的(マイオピック)な投資では理性を失い、結果としてお金と時間を失う。」、「リスクとは、自分が何をやっているかよくわからない時に起こるものです。」というウォーレン・バフェットの言葉を、我々は今一度考えなくてはいけない投資環境の中にいるのである。