バイ・アンド・ホールドの長期保有で本当に大丈夫?

「2,000万円問題」も相まって、資産運用への関心が高まっています。そしてファイナンシャルプランナーなどの専門家の方は、その多くが「iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)」や「つみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)」といった、税制上の恩恵を受けることができる制度を勧めています。

 しかし筆者は、その現状に対して危惧しています。なぜなら、iDeCoやつみたてNISAといった制度は、「バイ・アンド・ホールド」「長期保有」が前提で作られているからです。

 長期保有をする投資信託として推奨されるのは、「日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などの指数に連動するインデックス型の投資信託」です。

 しかし、もし日本経済が今後ほとんど成長しないとしたならば、長期間投資したとしても株価はほとんど上がらないかもしれません。

 さらには、上のケースⅥのようにマイナス成長ともなれば、株価の下落は避けられないでしょう。景気が悪化すれば企業業績も悪化してしまうからです。

 そうなると、長期保有すればするほど株価が値下がりしていき、老後の資金を作るつもりが逆に資産を減らすことにもなりかねないのです。

低成長時代を乗り切る現実的な対応策とは?

 厚生労働省でさえも、これからの日本はほとんど経済成長できないと認めています。こうした状況では、日経平均株価やTOPIXに連動するような投資信託に投資して長期保有をしたとしても、逆に株価が値下がりしてしまう可能性が高いと言わざるを得ません。

 また筆者は、日本だけでなく世界的に低成長が続く中、右肩上がりの経済成長を前提とした「長期保有」のこれからの有効性に疑問を抱いています。

 では、経済成長がほとんど見込めず、日経平均株価やTOPIXも長期的に見て右肩上がりの上昇に懸念を持っているとしたら、どのような投資手法を用いればよいのでしょうか。

 筆者は、「将来の成長が見込まれる企業」を「上昇トレンドの時だけ保有」することで、十分資産を増やすことが可能と考えていますし、実際もそのスタンスで行動しています。

 もし日本全体が低成長、マイナス成長になってしまうとしても、それは国全体の話です。個々の企業を見れば、元気いっぱいで成長を続けているところも数多くあります。

 したがって、将来の経済成長および株価の上昇が見込まれる銘柄を自分で探し、投資すればよいのです。

 そして、株価が値下がりを続ける下降トレンドのときは保有せず、上昇トレンドのときのみ保有するようにします。こうすれば、余計な時期に株を持たずに済みます。

 バイ・アンド・ホールド、長期保有の場合は株価が値下がりしている時期であっても保有を続けますが、それは長期的に株価が右肩上がりに上昇する前提だからです。その前提が揺らいでいるのであれば、今後株価がさらに値下がりする可能性が高い下降トレンドの状況で保有を続ける必要はない、これが筆者の見解です。